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妖怪のいない異世界で百鬼夜行をどうすんだ? ――描くたび俺が削れる妖怪ブック  作者: 雪ノ瞬キ


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33話

 黒い妖呪領域。


 その頃――

 

 拠点。

 水盤の前に、全員がいた。


 映る零の体。


 血管が浮き

 皮膚が黒く染まる。


 領域が揺れる。


 雪

「……崩れます」


 凛

「お頭!」

 零は息が荒い。


 膝。


 しかし笑う。

 全員、同じ目をしていた。


 それでも――

 零は、笑っていた。


 その証拠に……。



◇白と黒


 俺は叫ぶ。

「まだだ」


「まだ上がある」


 実はハッタリでもある。

 まぁぶっちゃけ、そうでもねぇ。

 

 俺が俺を鼓舞しなくちゃなんねぇ。

 やるっきゃねぇんだよ。


 森を見る。

 聖印で一部が白化してやがる。

 妖呪で飲み込めなかった分だ。


 森はなぜ死んだ。


 弱いからだ。


 なら俺は。


 まだ――


 死ぬ側じゃねぇ。


 俺の影が揺れやがる。

 クソが。

 相変わらず胸やけがするぜ。


 黒い影。


 狼の輪郭。


 声。


「主か」


「器か」

 俺は笑っちまう。

 どっちでもねぇよ。


「両方だ」


 影が俺の背へ。

 這い上がる感覚はむず痒い。

 でも骨が軋む。


 黒い鎧のようなものが


 一瞬で――

 

 体を覆う。

 軽い。


 鎧のはずなのに、

 重さがない。


 だが――


 中身が変わる。

 骨の位置がズレる。

 関節が広がる。


 人の形のまま、

 別の何かに近づいていく。


 ……馴染んでいる。


 これが、

 一番気持ち悪い。


 違和感が消えていく。

 さっきまであったはずの、

 “人間としての基準”が、

 薄れていく。


 速さに慣れる。

 力に慣れる。


 この形に、

 抵抗がなくなる。


 ……ああ、まずいな。


 これ、

 戻る気がしねぇ。


 目


 金色。


 爪


 伸びる。


 牙。


 俺は静かに言う。


「七だ」


 夜域。

 色が変わる。

 霧が黒く染まる。


 空が歪む。


 白の聖域。


 初めて揺れる。

 白は目を細める。


「……犬神」


 俺は風も風景も

 背後に置き去りにした。


 爆速。


 地面爆裂。


 音が遅れて来る。


 白


 わずかに動く。


 聖印刃。


 黒い爪。


 激突


 衝撃波。


 森が揺れる。


 ここから


 完全高速戦。


 景色が飛ぶ。

 繋がらない。


 一瞬ごとに、

 場所が変わる。


 連続していない。

 点で移動しているみたいだ。


 だが、

 意識だけは追いつく。


 遅れて理解する。


 今、

 どこにいた?


 何をした?


 ……考えるな。

 感じろ。


 処理が追いつかない。

 

 見えているのに、

 理解が遅れる。


 動いているのに、

 選択が後手に回る。


 先に体が動く。


 遅れて、

 理由がついてくる。


 ……主導権が、

 俺にねぇ。


 俺は今、

 何やってんだ。


 空中跳躍。


 鍵爪。


 黒雷。

 

 白


 聖印刃。

 聖光。


 衝突。


 空中戦。


 霧が吹き飛ぶ。


 木々が裂ける。



◇拠点


 水盤を通して零を見ていた妖怪たち。


 凛は目を見開く。

「……速すぎる」


 焔は珍しく身を乗り出して見る。

「見えない」


 雪は静かに言う。

「現場には近づかないで」

「巻き込まれます」


 地面が震える。

 水盤の水が揺れる。


 衝撃が遅れて届く。

 距離があるはずなのに、

 影響が来る。


 ……近すぎる。


 雪の目が細くなる。


「このままでは――」


 言葉を飲み込む。


 分かっている。


 ここも安全じゃない。


 振動が増す。

 周期が短くなる。


 衝撃が、

 重くなる。


 雪は水盤から目を離さない。


「……止まりません」


 誰も返さない。


 止まる想像が、

 できない。


 このまま続けば、

 どちらかが、

 確実に壊れる。


 ユイだけは切ない目をしていた。

 誰にも聞こえぬよう小さな声で行った。

「零さま。生きて」



◇黒と白


 俺


 拳。


 黒い雷。


 地面を走る。


 白


 聖光展開。


 衝突。


 黒 vs 白。


 夜域が震える。


 白

 空中停止。

「なるほど」


 少し間。


「これが七」


 俺は、無理やり笑う。

 ……そんな余裕、あるわけねぇ。

「気に入ったか?」


 白

「脅威だ」


 評価している。


 だが、

 警戒していない。


 距離も、

 間合いも、

 変えていない。


 ……まだだ。


 まだ、

 全然見せていない。


 こっちは、

 全部出してるのに、


 あいつは、

 “途中”だ。


 白の体。

 聖印が浮かぶ。


 皮膚に紋様。


 光。


 空気が変わる。


 俺思わず声を上げた。

「……何だあ?」


 白は珍しく答えた。

「半聖化」


 光が強まる。


 だが、

 眩しさじゃない。


 “密度”が上がる。


 存在が濃くなる。


 そこにいるだけで、

 空間が押し広げられる。


 ……違うな。


 押し広げているんじゃない。


 “優先されている”。


 世界の側が、

 あいつを選んでいる。

 

 白は静かに言う。

「均衡を乱すなら」


「討つ」


 俺は牙を見せて笑う。

「やっと本気か」


 イヤ、マジで冗談きちぃっての。

 こいつヤバイな。

 俺、限界来そうなんだが。


 視界が歪む。

 焦点が合わない。


 白が、

 二重に見える。


 いや、

 俺がズレている。


 足場の感覚が消える。


 踏んでいるのか、

 浮いているのか、

 分からねぇ。


 ……やべぇな。


 これ、

 もう長くねぇ。


 踏み込む。


 白

 

 聖印展開。

 空間が裂ける。


 音が遅れる。

 衝撃が先に来る。


 遅れて、

 空が鳴る。


 順番が狂う。

 因果がズレる。


 ……規模が違う。


 これはもう、

 ただの戦いじゃねぇ。


 黒雷。


 聖光。


 衝突。


 森


 震動。

 夜域


 揺れる。


 空


 裂ける。

俺の必死さ。

「来い」


「来い」


 動きが変わらない。


 速さも、

 重さも、

 何も変わっていない。


 出力を上げている様子もない。


 ……こっちは、

 削ってる。


 あっちは、

 変わってない。


 この差が、

 致命的だ。


 削れている。

 確実に。


 力じゃない。


 中身が、

 持っていかれている。


 押し切れば、勝てる。

 ……かもしれない。


 だが、

 終わった時、

 俺が残ってる保証がねぇ。


 七 vs 柱


 完全衝突。


 衝撃波が、夜域を揺るがした。

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