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妖怪のいない異世界で百鬼夜行をどうすんだ? ――描くたび俺が削れる妖怪ブック  作者: 雪ノ瞬キ


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28話

 夜。


 俺たちは、夜域の外縁に来ていた。

 皆を引き連れて肉眼で確認したかった。


「ねえ、零さま」


「どうした?」


「広がったら水流を広げても?」


 なんか、たどたどしく言う。

 そんなに遠慮されてもな。


「ああ、問題ない」

「ただし、外部の者が無断で使われると困るな」

「特産物が横取りされる?」


 そりゃそうだろ。

 カワが獲得するあの魚は美味いしでかい。

 あれは人が群がる。


「まあ、俺たちが独占して意味がある」


「うん、そうだよね。ルートどうしよう?」


 ヤベ、俺に聞かれてもな。

 まじわからん。

 俺ダメかも。


「心配すんな、大丈夫だ」

「雪、カワと水流ルートを考えてくれ」


 雪はすぐに俺の隣に来る。

「わかりました。零さまのご希望を伺いたく」


 さすが雪。

 助かるし、マジ優秀。


「そうだな。俺たちの独占さえ守れれば自由にしてくれ」


 こんな感じでいいだろう。

 信用し任せる。

 ぶっちゃけ、わからんから丸投げだがな。


「カワがある程度自由に変えられることを考えると妥当かと思います」


「それ以外は任せた」

 

 これで一件落着だ。

 お?

 土蜘蛛のヤツやるな。

 土蜘蛛が地脈を操作か。


 地面がうねる。


 こいつ、こんな事もできるのか。

 なら、地上戦はかなりいけるんじゃないか。


 普通にこれ足もときたらあるけねぇ。

 馬もヤバイだろうな。


 これが広がるってことなのか?

 黒い霧が自然と広がるのって。


 合わせて、森が横に広がる。

 というより、なんだ?

 いきなり木々がぼぼぼっと生えてきたんだが。

 俺、そんな自然しらんし。

 また、知らんことが増えたし。


 カワは飛び上がる。

「広がった!」


 おいおいカワさんや

 そんなぴょんぴょん飛んだら、

 揺れまくるぞ。


 目のやり場に困るんだが。

 あれ?

 今ちょっと口角上げてなかったか?


 俺は知らんふりを決める。


 焔はさも当たり前のようにうなずく。

「領域拡張成功」


 雪は静かに言う。

「夜域拡張完了です」

 

 俺、一人知らんがな。

 マジで? これ広がった?

 やべ、俺も知った風に装わないと。

「ああ、そうだな」

 

 なんというか、皆敏感だな。

 俺、わからん。


 黒い芽。

 数本。


 割れる。


 小妖怪が現れる。

 これはもう、自然発生だろ。


 凛は人懐っこい笑顔だ。

「増えたな」


 俺はなんというか。

 まあ、描いちゃいねぇけどな。

「描いてねぇぞ」


 雪は俺を見てうなずく。

「夜域が生んでいます」


 雪は続けて言う。

「試しましょう」

「百鬼夜行」


 凛ニヤリ。

「いいね」


 夜。


 月。


 妖怪が並ぶ。


 鬼

 牛鬼

 ぬらりひょん

 自然妖怪

 小妖怪


 整列。


 焔が指示。

「隊列」


 ぬりかべ

 道を作る。


 カワ

 水路形成。


 凛は腕を鳴らす。

「よし」

「完全復活だ」


 鬼たちが吠える。


 思わず俺は言う。

「腹、大丈夫なのか?」


 凛は頬を染める。

「もう治った。ほら」


 凛は下着と一緒にみせつける。

 どうした?

 何が狙いだ。


 俺に耳打ちする。

「早くあたいを嫁にして。そしたら毎日してあげるから」


 俺は何をとは聞かない。

 なんだこの展開。


 こいつのたまに照れくさそうにする表情ヤバイ。

 破壊力ありすぎる。

 てか、妖怪たちって、皆美人なんだよな。


 ひょっとして俺、ハーレムなのか?

 いや、ここで弱みを見せちゃだめだ。

 クールで威厳のある風を演じないとな。


 それが無くなったら、俺はただのうどん屋だ。

 まぁぶっちゃけ、それでもいいけど。


 凛は気合を入れる。

「進め!」


 妖怪行進。

 森を進む。


 月光。


 影。


 百鬼夜行。


 俺は、思わず小さく笑う。

「……これだよ」


 そこに

 夜市側から声。

「おおおお!」


 テカテカ紳士。

 福助屋甚兵衛。

「素晴らしい!」

「妖怪行進であります!」


 うわコイツまた来やがった。

 しかもまた竜油ぬりたくってやがる。

「来るな」


 甚兵衛

「ありがたきお言葉!」


 はあ……。

 でもこいつの竜油は効くんだよな。


 甚兵衛

 震えている。

「妖怪国家…」

「完成しつつあります」


 俺は、まだまだだと思っていた。

「まだ途中だ」


 甚兵衛

「ですが」

「この光景」

「世界が震えますです」


 雪は報告を入れる。

「交易量が増えています」

「夜市拡張が必要です」


 そんな早くか、資源は貴重だな。


 金が回る。


 戦わなくても、領域が広がる。


 ……これも戦力だ。

「もうそんなか」


 となれば、それを奪いにくる奴等も

 そろそろ現れるか。


 いつだって資源には、

 独占欲を持つ他者がいるもんだ。


 妖怪行進。


 森。


 月。


 影。


 巨大な列。


 まさに

 百鬼夜行。


 ああ、やっとここまで来たんだな。

 ここに来た当初は酷かった。

 俺一人だし。

 皆を救い出す事で精一杯だったよな。

 

 その時。


 空。


 空間が歪む。


 俺は一点に集中した。

「……なんだ?」


 雪は空を仰ぐ。

「空間歪曲?」


 空の裂け目。


 ほんの一瞬。

 何かの影。

 消える。


 俺は雪に言う。

「……今の見たか」


 雪の表情は険しい。

「ええ」


 夜域

 静まり返る。


 風が、止まる。

 霧も、動かない。


 さっきまでざわついていた妖怪たちも、

 一斉に沈黙する。


 ……おかしい。


 命令していない。


 それなのに、

 “揃って止まった”。


 上だ。


 空。


 裂け目はもうない。


 けど――


 残っている。


 見えない何かが、

 そこに“居座っている”。


 視線を感じる。


 重い。


 さっきの監察官とは違う。


 もっと、深い。

 “測る”んじゃない。

 “値踏み”だ。


 俺は無意識に歯を噛む。


 指先。


 黒が、じわりと広がる。


 反応している。


 夜域も。


 俺も。


 同時に。


 雪が低く言う。

「零さま……今のは」


「ああ」

 

 短く返す。


 言葉にするまでもねぇ。


 アレは――


 来る。


 確実に。


 次は、試しじゃない。


 確定だ。


 百鬼夜行の列が、

 わずかに揺れる。


 恐怖じゃない。


 警戒だ。


 準備だ。

 

 森全体が、

 “迎撃の形”に変わっていく。


 俺は空を睨む。

 何も見えない場所を。

「……いいぜ」


 小さく吐く。

 来るなら来い。


 ここはもう――


 逃げる場所じゃねぇ。

 ぶつかる場所だ。


 夜域の霧が、

 静かに濃くなる。

 

 まるで、

 戦いの前みたいに。

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