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妖怪のいない異世界で百鬼夜行をどうすんだ? ――描くたび俺が削れる妖怪ブック  作者: 雪ノ瞬キ


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26話

 夜。


 地下拠点。


 百目の水盤。


 雪が静かに言う。


「空です」


 水盤に映る。


 白い影


 ……またか。


 動かない。

 いや、動いてないんじゃねぇ。


 “動く必要がない位置にいる”。

 距離を取って、

 こっちを見てやがる。


 前と同じだ。

 無理に来ない。


 だが、離れもしない。

 ……見てるだけのくせに、

 一番気味が悪い。


 凛が腕を組む。

「……また来たな」


 俺はヤツを知らない。

 だが、ヤツは俺たちを知っている。

「聖都の白いヤツか」


 まだ正体不明だ。

 夜市も順調、商人との縁も出来た。

 それなのに、なあ。


 おいおい、今いい感じなのによ。

 面倒ごとが降って沸いてきやがる。

 お前タケノコか?

 面倒が育つの早すぎんだろ。


 一言、言いたい。


 俺は、ソース焼きそば食いてえんだ。

 あの夜市になかったヤツだな


 ベビーカステラもな。


 夜域外縁。


 牛鬼たちが騒ぐ。


「来たぞ!」


「聖都の白いヤツだ!」


 空から降りてくる。


 白い長衣。


 片目の金印。


 足は地面に触れない。


 静かに浮遊。


 一拍の間。



◇白いヤツ


 森を見る。

 黒い霧。

 濃い夜域。


 小さく呟く。

「……領域が濃い」


「七」


 その言葉の本当の意味は、

 まだ誰も知らない。



◇零たち


 俺はポケットから小瓶を出す。


 凛は興味深そうに見て言う。

「それ塗るのか」


 塗れという割には、眉をハの字に下げる。


 俺は当たり前と言いたい。

「試しだ」


 だってな。

 あんだけおすすめしてんだぜ?

 効果あるなら、俺の場合、力が増すのは大歓迎だぜ。


 瓶の中。

 竜油が揺らぐ。


 さほど気味が悪い物でもない。

 どこにもあるオリーブオイル見たいなものだ。

 ちょうど香りもそんな感じだな。


 あれ?ひょっとしてこれ絡めて食ったら美味いのか?

 いや、ヤバそうだ。

 やめておこ。


 雪が眉を寄せる。

「やめた方が」


 俺は自分の足を軽くたたく。

 パチン、パチンと。

「足だけだ」


 靴を脱ぐ。


 足に塗る。


 竜油が肌に染みる。

 これ速攻でしみ込むな。

 なんだよこれ。

 ん?

 違和感が。


「……熱いな」


 俺はさっそくアレを着こむ。

「犬神」


 黒い影。


 犬神が纏う。


 霊力。


 筋力。


 竜油。


 三つが重なる。

 パキッ!

 ぺキ、ぺキぺキッ!


 地面がひび割れる。


 凛は口を大きく開け、眉を持ち上げた。

「おいおい」


 カワは無邪気で楽しそうだ。

「速そう!」


 俺たち幹部全員が地上に上がっていた。

 出し惜しみしてる場合じゃない。

 それほど、ひりつく空気を感じる。


 前と同じはずなのに、

 どこか違う。


 空気が重い。

 圧がある。


 見られているだけで、

 削られていくような感覚。


 ……気のせいじゃねぇ。


 あいつは、

 ただそこにいるだけで、

 場を支配している。


 あれはヤバイ。


 凛、突撃。

 鬼の拳。


 白いヤツ


 浮遊回避。


 雪。

 氷槍。


 カワ。

 濁流。


 焔。

 炎壁。


 前回と同じ連携。


 白いヤツ


 聖印展開。


 防御。


 俺は一歩踏み込む。


 次の瞬間――


 消える。

 世界の音を置き去りにした。


 視界が流れる。

 いや、違う。

 世界が遅い。


 自分だけが先に進んでいる。

 空気が壁みたいに当たる。


 だが、押し切れる。

 足が勝手に前へ出る。


 止まれない。


 ……これ、やりすぎるとヤバいな。

 

 でも――


 止める理由がねぇ。


 凛。

「!?」


 白いヤツの横。


 拳。


 衝撃波。


 白いヤツ

 初めて後退。


 当たったはずだ。


 手応えもある。


 だが――


 軽い。


 浅い。


 効いている感じがしない。


 下がったのは、


 避けたんじゃない。


 距離を取っただけだ。


 ……まだ余裕がある。


 俺は走る。

 森を裂く。


 影が走る。

 再び接近。


 蹴り。


 衝撃。


 白いヤツが距離を取る。


 その時――


 白いヤツの独白。

 低く呟く。


「……速い」


 さらに俺は踏み込む。


 三度目の突撃。


 白いヤツの目が細くなる。

「何が武人の三倍だ……ありえん」

「騎士団も神殿の奴も適当なことを言うな」


 犬神の黒い影。

 森を裂く速度。


「黒い彗星め」


 一拍。


「奴は十倍以上だ」


 さらに低く。

「……化け物か」


 雪。

「今です!」


 凛。

 拳。


 カワ。

 濁流拘束。


 焔。

 炎壁。


 俺、高速突撃。

 連携は前回より、

 明らかに強い。


 白いヤツは、

 距離を取る。

 静かに俺を見る。


「なるほど」


「進化している」


 俺は思わず答えちまった。


「そうか?」


 白いヤツは淡々としている。

「だが」


 少しの間。


「まだ」


「完成していない」


 白いヤツが浮上。

 空へ。


「次は」

「観察では終わらない」


 白衣が月光に溶ける。


 消えた。


 なっ……。

 なんだよその技。

 俺にも教えろよ。


 消えるって、凄すぎんだろ。

 はぁ、いいなぁ。


 静かになったが違和感しかねぇ。

 さっきまでの圧が、嘘みたいに消える。


 だが――


 空気だけが残っている。

 あいつがいた場所に、

 まだ何かが残っているみたいだ。


 ……来るな。


 そう思っても、

 もう一度来ると分かる。

 あれは、終わっていない。


 凛

「逃げたか」


 焔

「……強い」


 カワ

「速かったね!」


 雪は俺を見る。

「足、大丈夫ですか」


 全然大丈夫じゃない。

「熱い」


「やっぱ効くな」


 デメリットはあるけどな。

 底上げできるのはかなり強い。


 ああ、こりゃまんまと乗せられたな。

 俺、竜油のファンになっちまったぜ。


 凛

「福助屋の油か」


 雪

 ため息。

「だから言ったのに」


 カワ

「もっと塗ろう!」


 俺は拒否る。

「死ぬ」


 これ、日焼けで真っ赤になった肌と同じだぞ。

 マジ痛い……。

「ああ、いざという時だけだな」



◇白いヤツ


 遠くの空。

 白いコートがなびく。


 独白。

「七」

「予測以上」

「……報告対象」


 聖都へ飛ぶ。

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