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妖怪のいない異世界で百鬼夜行をどうすんだ? ――描くたび俺が削れる妖怪ブック  作者: 雪ノ瞬キ


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25話

 月夜。


 森の端。


 ぬりかべが巨大な壁を作る。

 これって出店の後ろに壁ってヤツか。

 なんかほんと祭りみたいだな。


 その壁の内側に夜市ができている。


 屋台はある。

 灯火で穏やか。

 木の台でどこか懐かしい。


 なんだよ。

 円卓づくりといい、ぬりかべやるじゃねぇか。

 すべてぬりかべ建築。


 これで祭りばやしがあれば、

 ほんと完璧だよな。


 俺、焼きそば食いたい。

 ああ、ベビーカステラめちゃ好きなんだよな。

 でも、ないか……。


 なんだ?

 雪のヤツいつになく表情が明るいな。


 雪が静かに言う。

「夜市、開始です」


 それにしたって良く集まったよな。

 商人たちマジでビビッているじゃん。


 やべ威厳大事だよな?

 俺、ハッタリ効かせておくか?


 ざわざわ。


 腰の低い中年の人が重い口を開く。

「本当に妖怪の森なのか…」


 また別のヤツも。

「帰ろう」


「やめとけ」


 その瞬間、凛が腕を組んで立つ。


 凛さんや?

 いくらお前見た目超美人でもさ、ビビるよ?


 いや、そんな腕の組み方したらさ、

 俺、目のやり場に困るんだが。


 まあでも鬼だよな。

 こりゃ、完全な威圧だよな。

 

 凛怒ってないか?

「帰るなら今のうちだ」


 小太りの商人は背筋を伸ばす。


「ひぃ!」


 いやお前、そこはブヒって言うと

 なかなか決まるぜ?


 しかし雪が一言。

「安心してください」

「夜市では殺しません」


 空気が少し緩む。

 まあ、そりゃそうだ。


 死んだら売れない。

 俺は、少し後ろから眺めている。


 思わず口にでちまった。

「妖怪の市場か……」

「ずいぶん――国っぽくなったな」


 俺はここに来た時は、マジ必死だったんだぜ?

 石化するしよう。

 マジで焦った。


 隣にユイがそっと来る。

 なあ、服の裾なんでつまむんだ?


 上目づかいで俺に言う。

「零さまが作ったんです」


 いや、そうか?

「俺はうどん作っただけだ」


 なんで、ユイは胸元緩めてるんだ?

 まて、俺、目線泳ぐじゃねぇか。

 はあ、俺の威厳が……。


 そこへ、

 テカテカの紳士。


 丸眼鏡。

 オールバック。

 ちょび髭。

 紳士ジャケット。

 下半身ふんどし。


 しかも全身オイル。


 商人たち。

「誰だあいつ」


 男は、両手を広げる。

「妖怪の市と聞いて参上しましたです!」

「妖怪商人、福助屋甚兵衛であります!」


 凛、顔がひきつってんぞ?

「変なやつだ」


 ああ、俺もそう思うよ。

 なんだコイツ?

「ああ、知ってる」


 甚兵衛が近づく。


 スンスン。


 こいつ俺の匂いを嗅ぎやがった。

 ヤベ、変態だ。


「零さまのおいにぃ……」


「これは七の香り……」


「ゾクゾクしますです」


 ヤバイ本物の変態だ。

 しかもコイツ今なんて言った?

 お・い・にぃとかいいやがったぞ。

「くるな」


 甚兵衛は歓喜に満ちやがる。


 やめろ、その顔。

「ありがたきお言葉!」


 甚兵衛が声を張る。

「本日の取引開始であります!」


「塩! 鉄! 布! 酒!」


「妖怪商品と交換であります!」


 商人たちがざわつく。


 雪が管理。


 ぬりかべが台を並べる。


 あれ?

 普通の商人でいいのか?


 凛、肉を抱えてきた。

 まあ、雪の氷冷倉庫に保管してたから、

 鮮度は抜群だよな。


 巨大獣肉をドン。


「肉だ」


 商人は目を見開き、眉を持ち上げる。

「でかい……」


 ああ、俺も思うぜ。

 何人分だよあれは。

 軽く20から30人はいけるんじゃねぇか。


 カワもここぞと持ってきた。

 こいつも結構力あるんだよな。

 可愛い顔してすげぇ。


 巨大魚。


「川から取れたよ!」


 商人。

「怪物じゃないか」


 だよな。

 俺の背丈超えてるんだが。

 そんな川で泳ぎたくねぇ。

 さすが、我が水泳部だな。


 焔は地味に作ってたアレか。


 燻製。

「保存食」


 我が土木代表の土蜘蛛は何だ?


 魔石。


「地下」


 商人

「魔石だ!」


 俺も今、知った。

 あれ、魔石なんだな。

 ラピスラズリかと思ってたよ。

 やべ、俺知らないこと多いじゃねぇか。


 商人

「銀貨5枚」


 カワ

「魚の方が高い」

「10」


 商人

「7」


 カワ

「9」


 甚兵衛

「8であります」


 取引成立。


 ユイが影から商人に近づく。

「聖都の動き、知っていますか?」


 商人

「少しだけ」


 小袋を渡す。


 情報取引。

 ユイはうまいな。


 甚兵衛が瓶を出す。

「特別商品であります」


 俺は思わず聞いちまった。

「なんだそれ」


「筋肉強化剤であります。竜油と言います」


 名前からして強そうだな。

 瓶の中。


 竜油。

 銀色に見えるな。


 甚兵衛の目に力が入り、声が裏返る。

「竜人の膂力であります」


 そんな力説せんでも。

 どこかの通販番組みたいじゃねぇか。

 まぁでも興味はあるな。


 アレと組み合わせれば、もしや……。

「……それ強くなるのか」


 雪が血相抱えて飛んできた。

「やめてください」


 凛が舌なめずりしながら言う。

「お頭、塗ってくれ。あたいにも」


 カワは無邪気だ。

「見たい!」


 お前ら……。

 俺で遊ぶな。



 俺はふと、市場を見渡す。

 こんなアホなやりとりっていつぐらいだ?

 肩の力が抜けている。


 妖怪がいて。

 人間がいる。

 そんでそいつらが交易している。


 思わず口に出た。

「妖怪と人間が商売してる」

「……妙な世界だな」


 雪は、柔らかく笑う。

「国は、こうして生まれるんです」


 ああ、なんでだろう。

 すこし、しっくり来た気がする。


 石の鐘が鳴る。


 雪は言う。

「夜市終了です」


 商人たちは来た時と大違いだ。

 足取りは軽く、皆笑顔だ。


 それを外縁まで俺と雪は見送る。

 静かな森。


 ああそういや、そうだな。

「結局、金払ってねぇな」


 雪は淡々と言う。

「必要ありません」


「なんで?」


「森が豊かだからです」


「……なるほどな」


 そりゃそうだな。

 あいつ等の普段の狩や素材集めで、

 自給自足だと思ってたが――。


 案外、イケルな。

 

 こういう夜域、悪くねぇな。


 俺たち、資源国家。

 胸アツ。


 てか、俺気が付かなったぜ。

 だめだめじゃん。俺……。

 

◇別の視線が刺さる。


 その頃――


 遠くの丘。


 白装束の影。


「七の国……か」


 月が夜域を照らす。

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