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第91話 比較される側


昼過ぎ。


ギルドの中は、

朝より少しだけ人が多い。


依頼を終えた者。

これから受ける者。

半日の仕事を終えた空気が、重なっている。


掲示板の前で、

先ほどの同年代の子を見かけた。


もう一枚、札を剥がしている。


(……続ける気か)


体力が残っている判断。

悪くない。


だが――

視線が、来る。


一瞬。

すぐ逸らされる。


(……意識は、したな)


同じ仕事。

同じ報酬。

同じ時間。


だが、

帰りの余裕が違った。


受付の女が、帳面に何か書き込む。


視線が、こちらに向く。


「……外縁、どうだった」


「……問題ありませんでした」


簡潔に答える。


女は、依頼書の印を確認し、

一拍置いてから言った。


「予定通り、だな」


それは――

評価だ。


良くも悪くもない。


だが、

“想定内”に収まったという意味。


(……悪くない)


そのやり取りを、

少し離れた場所で、同年代の子が見ていた。


視線が、また合う。


今度は逸らさない。


向こうが、先に口を開いた。


「……なあ」


「……なに」


「町の外、慣れてるのか?」


質問は、探るようだった。


「……慣れてはいない」


「でも……

 慣れる前提で動いてる」


相手は、少し考える。


「……俺は、

 慣れる前に剣を持てって言われた」


(……なるほど)


家の違い。

教えの違い。


どちらが正しいかは、

まだ分からない。


「……また、同じ依頼になるかもな」


「……そうかも」


それ以上、話は続かない。


だが――

距離は、少しだけ縮んだ。


夕方。


掲示板の下段が、

一枚だけ、入れ替わっている。


「配達/町外縁・往復/銅貨五」


(……少し、上がったな)


半日。

だが、距離が増えている。


偶然か。

それとも――


受付の女が、ちらりとこちらを見る。


何も言わない。


だが、

“見ている”目だった。


木札を握る。


今日一日で、

変わったのは――

景色じゃない。


立ち位置だ。


ローディス王国領、

オーレムの町。


少年は、

同年代と並び、

少しだけ前に出てしまった自分に気づく。


追い抜いたわけじゃない。


だが――

同じ場所に留まっても、同じではいられない。


物語は、

静かに「選別」の段階へ入っていく。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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