第83話 同じ仕事、違う結果
連続投稿です。
82話からお読みください。
昼前。
掲示板の下段に、
よく似た紙が二枚並んでいた。
「配達/町内/銅貨三」
場所は近い。
距離も、ほぼ同じ。
違うのは――
受け取り先の名だけだ。
一枚を剥がす。
同時に、
隣の紙が取られる。
振り向くと、
同じくらいの年の子どもだった。
背丈も、
装備も、
似ている。
(……分けたか)
一人で二件、
という話にはならなかった。
理由は分からない。
だが――
ここでは、
そういうことがある。
受付に向かう。
依頼書を受け取る。
女は、
二人を見比べる。
一瞬だけ。
そして――
それぞれに紙を渡す。
説明はない。
町に出る。
古道具屋に着く。
戸を叩く。
「……配達です」
店主が顔を上げる。
一瞬、
こちらを見る。
次に、
依頼書を見る。
「……ああ」
短い声。
「この前の子だな」
名前は出ない。
だが――
覚えられている。
荷を渡す。
受け取り印。
無言。
それで終わる。
店を出ると、
通りの向こうで声がした。
「……あ?」
もう一人の子だ。
同じように、
依頼書を差し出している。
だが――
相手の反応が違う。
「今日はもう、
次の段取りに入ってる」
「昨日も言っただろ」
子どもは、
紙を見る。
「……同じ依頼です」
「それは分かってる」
店の男は、
首を振った。
「受け取らない」
理由は、
それ以上語られない。
扉が閉まる。
子どもは、
立ち尽くす。
怒らない。
泣かない。
ただ――
どうしていいか分からない顔だ。
(……戻るしかない)
声は、
かけない。
ここで助けると、
余計な“関係”ができる。
それは――
次の仕事を減らす。
ギルドに戻る。
依頼書を出す。
受付の女は、
印を見る。
「……問題なし」
銅貨三枚。
いつも通り。
少し遅れて、
もう一人が戻ってきた。
紙は、
出せない。
「……受け取って、
もらえませんでした」
女は、
理由を聞く。
短く。
子どもが答える。
女は、
頷くだけだ。
帳簿に、
小さく何かを書く。
消すわけでも、
強く書くわけでもない。
ただ――
記す。
奥で、
低い声。
「……あの店、
次はどうする?」
「……同じでいい」
「さっきの子か?」
「いや」
それだけ。
名前は出ない。
だが――
決まった。
外に出る。
夕方。
町の色が、
少しずつ変わる。
同じ依頼。
同じ銅貨。
だが――
結果は、
同じじゃない。
少年は、
歩きながら思う。
(……運じゃない)
(……力でもない)
“受け取られる側”に、
なったかどうか。
それだけだ。
ローディス王国領の町
オーレム。
誰も責められない。
誰も褒められない。
だが――
掲示板に貼られる次の紙は、
もう、
同じ高さには戻らなかった。
それに気づいているのは、
ギルドと、
一部の依頼主と――
そして、
まだそれを言葉にしない、
十歳の少年だけだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




