第80話 少し違う紙
連続投稿です。
79話からお読みください。
朝。
ギルドの前は、
昨日と同じ顔ぶれだった。
眠そうな者。
焦った者。
慣れた者。
違うのは――
掲示板の下段。
紙の色が、
一枚だけ違う。
白ではない。
少し厚く、
端が揃っている。
(……新しい)
近づく。
内容は、
簡単だ。
「町内配達/二件/半日/銅貨四」
「割れ物なし/時間指定あり」
(……指定あり、か)
昨日までには、
なかった条件。
時間。
順序。
相手。
“考える”仕事だ。
紙を剥がす。
すると、
背後から声。
「……それ」
受付の女だ。
「やれるか?」
「はい」
即答。
迷いがないかを、
見ている目。
女は、
依頼書を一枚差し出す。
「今回は、
これを“先に”持って行け」
依頼内容。
場所。
時刻。
下に、
小さな空欄。
「……署名?」
「受け取りの印だ」
「仕事した証拠」
(……確認が増えた)
頷き、
紙を受け取る。
外へ出る。
町の中。
一件目は、
鍛冶屋。
忙しそうな男が、
荷を受け取り、
紙を見る。
「……子ども?」
一瞬の間。
「……ギルドからです」
紙を差し出す。
男は、
目を通し、
無言で印を押した。
「時間通りだ」
それだけ。
二件目は、
薬屋。
店主は、
紙を見る前に言った。
「……さっきの子か」
(……話が、
回ってる)
「早いね」
印。
受け取る。
昼前。
依頼は、
終わった。
ギルドに戻る。
紙を出す。
女は、
印を確認し、
何も言わずに銅貨を四枚置いた。
その時――
もう一枚、
小さな紙が添えられる。
「……次も、
これぐらいのにする」
それだけ。
特別扱いじゃない。
だが――
昨日より、
一段上だ。
木札を握り、
外へ出る。
町は、
変わらない。
だが――
見えるものが、
少し増えた。
(……選ばれてる、
わけじゃない)
(……試されてる)
それでいい。
まだ――
その位置にいたい。
十歳の少年は、
今日も名もない仕事を終える。
だが、
貼られる紙の質だけが、
静かに変わり始めていた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




