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第77話 軽い依頼、軽くない目

連続投稿です。

76話からお読みください。


朝。


冒険者ギルドの扉は、

もう開いていた。


昨日と同じ時間。

同じ位置。


だが――

空気は、

少しだけ違う。


中に入ると、

視線が一つ、

先に動いた。


受付の女だ。


(……覚えられたな)


悪い意味ではない。


だが――

“数”として見られていない。


それだけで、

十分な変化だった。


掲示板を見る。


下段。

銅貨の依頼。


昨日より、

紙が減っている。


残っているのは――

少しだけ、

条件が違うもの。


「倉庫整理/半日/銅貨三」

「薬草仕分け/一日/銅貨四」

「配達/町外れ/往復/銅貨五」


(……距離が、

伸びたな)


質が上がった、

というより――

“責任”が増えた。


視線を戻すと、

受付の女が言った。


「……昨日の依頼、

問題なかった」


報告書だ。


依頼主の署名。

手間なし。

破損なし。


「時間も、

守ってる」


それは、

能力じゃない。


信用だ。


「今日は――

これ」


女は、

一枚の紙を、

掲示板から外した。


「配達」


「町外れの、

薬師まで」


「荷は軽い」


「だが――

届け先は、

気難しい」


(……人だな)


物じゃない。


相手を見る依頼だ。


「報酬は、

銅貨五」


昨日より、

二枚多い。


だが――

危険が増えるわけじゃない。


(……様子見だ)


ギルド側の。


「断ってもいい」


「まだ、

下の依頼もある」


選択肢を、

残してくる。


(……試してる)


返事は、

早くする。


「……受けます」


受付の女は、

一瞬だけ、

こちらを見る。


評価じゃない。


“確認”だ。


「依頼書に、

サイン」


「帰ったら、

ここに持ってこい」


「報酬は、

その時だ」


依頼書を受け取る。


紙は、

昨日より少し厚い。


(……安く扱われてない)


それだけで、

十分だった。


外に出る。


町外れの道。


人が減る。

視線が減る。


だが――

完全には消えない。


(……ここからが、

一段上だ)


依頼の質が、

少し上がる。


同時に――

見られ方も、

一段上がる。


失敗すれば、

戻される。


成功しても、

褒められない。


それが――

「次の段階」。


ローディス王国領の町、

オーレム。


ギルドは、

まだ少年を信用していない。


だが――

“使えるかどうか”を、

測り始めていた。


そして少年は、

それを正しく理解していた。


期待されないうちが、

一番――

安全だということを。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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