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第69話 朝は計算から始まる

連続投稿です。

67話からお読みください。


朝。


町が、

動き出す。


厩舎の裏でも、

それははっきり分かる。


馬のいななき。

桶の水音。

人の足音。


(……朝だ)


体を起こす。


冷えは、

まだ残っている。


だが――

動ける。


袋を、

静かに開く。


中身を、

一つずつ確かめる。


水――

半分以上、残っている。


保存食――

二つ。


銅貨――

八枚。


一度、

指で触れてから、

数える。


(……父さんからのが、八)


(……登録で、一)


(……水で、二)


(……昨日、稼いだのが、三)


頭の中で、

順に並べる。


数は――

戻った。


だが――

意味は、違う。


(……使っていいのは、三)


それ以上は、

減らしたくない。


これは、

生活費じゃない。


「戻るための金」だ。


袋を、

きちんと閉じる。


(……今日も、働く)


だが――

焦らない。


昨日、見た掲示板。


剥がされる依頼。

残る依頼。

夕方に落ちてくる紙。


(……午前中だ)


体力があり、

頭も冴えている時間。


町を、

歩く。


人の流れに、

逆らわない。


昨日と、

同じ道。


だが――

見えるものは違う。


子どもが立ち止まる場所。

大人が避ける依頼。

声が荒れる通り。


(……金は、

増やすより

減らさない方が難しい)


ギルドの前に立つ。


掲示板を見る。


紙は、

入れ替わっていた。


「薬草採取/半日/銅貨三」

「荷運び補助/午前/銅貨二」

「溝掃除/町南/銅貨二」


森は、

まだ避ける。


荷運びは、

人が多い。


(……溝掃除)


地味で、

確実。


紙を、

剥がす。


一瞬、

視線が集まる。


だが――

誰も止めない。


昨日の木札が、

効いている。


受付の女が、

こちらを見る。


「……今日もか」


「……はい」


「無理はするな」


それだけ。


依頼書を受け取り、

外へ出る。


町の朝は、

もう完全に回っている。


昨日は、

生き延びた。


今日は――

積み上げる日だ。


ローディス王国領の町、

オーレム。


十歳の少年は、

朝に学ぶ。


金を持つとは、

数を揃えることじゃない。


どの金を使わないかを、

決め続けることだと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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