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第63話 門の向こう側

連続投稿です。

61話からお読みください。


昼前。


街道の先に、

石の壁が見えた。


高くはない。

だが――

“境界”としては、

十分だった。


(……町、だな)


足を止める。


すぐ行かない。


前世の癖だ。

知らない場所ほど、

一度、見る。


人の出入り。

荷車。

武器を持つ者。

持たない者。


(……人が多い)


森とは、

違う緊張。


ここでは、

力より――

視線が危険だ。


門。


二人の門番。

槍。

革鎧。


若くもなく、

老いてもいない。


“仕事”として立っている顔。


(……冒険者も、

通る門だな)


分かる。


歩き方。

視線の配り方。

村とは、

まるで違う。


順番を待つ。


前の商人が、

通行証を見せる。


次は、

一人旅の男。


背に剣。

軽装。


門番が、

声をかける。


「……依頼帰りか?」


「まあな」


短いやり取り。


(……依頼)


胸の奥が、

静かに鳴る。


(……やっぱり、

ここが拠点か)


確証はない。


だが――

線は、繋がる。


順番が来る。


門番の視線が、

こちらに落ちる。


一瞬。


年齢。

荷。

武器。


全部、

測られている。


「……一人か?」


「……はい」


声は、

低めに。


子ども扱いされると、

面倒だ。


「どこから来た」


一瞬だけ、

間を置く。


(……嘘は、

混ぜる)


「……街道沿いの、

村です」


名前は、

出さない。


門番は、

深追いしない。


「用件は」


「……仕事を、

探しに」


完全な嘘じゃない。


門番は、

肩をすくめる。


「中では、

問題起こすなよ」


「……はい」


通された。


石畳。


音が、

違う。


足音が、

はっきり返る。


(……世界が、

変わったな)


町の中は、

匂いが多い。


鉄。

油。

香辛料。

人。


魔力の流れも、

複雑だ。


森より、

ずっと。


(……ここで、

力は使えない)


確信する。


ここでは、

“目立たない”ことが、

最優先だ。


袋の重さを、

確かめる。


保存食は、

残り三日分ほど。


水は、

今朝補給した分が、

半分。


(……まずは、

水だな)


井戸の位置を、

探す。


周囲を、

観察しながら。


急がない。

迷わない。


“田舎者”に見せすぎず、

“慣れた者”にも見せない。


(……難しいな)


だが――

嫌じゃない。


この緊張は、

前世にもあった。


生きるための、

感覚だ。


ふと。


酒場らしき建物から、

声が聞こえた。


「……辺境の村?」


「……ああ、

被害はなかったらしい」


「……妙だな」


足を、

止めない。


聞かない。


今は――

まだ。


(……でも、

やっぱりだ)


この町と、

あの村は、

確かに繋がっている。


ローディス王国領の辺境。


少年は、

初めて――

“世界の中継点”に立った。


ここは、

目的地ではない。


だが――

戻るにも、

進むにも、

必ず通る場所だ。


そしてトアは、

まだ知らない。


この町のどこかに――

自分の村を「処理した側」の記憶が、

確かに残っていることを。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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