第62話 人の気配
連続投稿です。
61話からお読みください。
朝。
目覚めは、
早かった。
理由は、
はっきりしている。
(……音)
遠い。
だが――
確かにある。
鉄。
革。
人の声。
(……街道が、
太くなってる)
土の踏み固め方が、
違う。
轍が、
重なっている。
(……近いな)
町。
それを、
実感する。
だが――
距離は、
まだある。
歩く。
速度は、
上げない。
(……ここからが、
一番危ない)
森よりも、
獣よりも――
人だ。
昼。
初めて、
すれ違う。
商人。
馬車。
目は、
合わない。
だが――
見られている。
荷。
年齢。
装備。
(……一人旅)
分かる人には、
すぐ分かる。
袋を、
握る。
位置を、
ずらす。
木剣は――
見せない。
(……弱そうに、
見せすぎるな)
かといって――
強そうにも、
見せない。
“普通”。
それが、
一番難しい。
喉が、
渇く。
だが――
沢はない。
街道沿いは、
見られすぎる。
(……町まで、
持たせる)
判断。
保存食は、
残り半分。
(……想定内)
だが――
余裕じゃない。
午後。
空が、
開けた。
遠く。
屋根。
壁。
(……あれが、
町)
思ったより、
小さい。
だが――
確かに“人が集まる場所”。
足が、
止まりかける。
(……今日は、
着かない)
無理に行けば――
門が閉まる。
夜の町は、
外の人間に優しくない。
(……手前で、
休む)
森でも、
街道でもない場所。
少し外れた、
低い丘。
視界は、
悪くない。
人は、
来にくい。
水袋を、
確かめる。
(……あと一日)
喉を、
湿らす程度。
節約。
火は、
使わない。
だが――
寒さは、
我慢しない。
体を、
丸める。
“気”を、
巡らせる。
最低限。
(……今日は、
無事だ)
だが――
気は抜かない。
夜。
遠くで、
灯りが揺れる。
町の光。
(……近いな)
だが――
まだ“外”だ。
布を、
被る。
目を、
閉じる。
明日は――
人の中に入る。
森とは、
違う戦場。
ローディス王国領の街道。
少年は、
初めて――
「辿り着ける距離」にある町を前に、
足を止めた。
それは、
弱さじゃない。
生き残るための、
選択だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




