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第61話 慣れが生む隙


朝。


目を開けた時、

一瞬――

ここがどこか、

分からなかった。


(……外だ)


草の匂い。


空。


木の影。


昨夜は、

街道から少し離れた場所で

休んだ。


焚き火は、

使っていない。


匂いは、

残る。


だから――

冷たいまま。


体を、

起こす。


(……重い)


昨日の疲れが、

抜けきっていない。


水袋を、

確かめる。


まだ、

ある。


だが――

減っている。


(……想定通り)


保存食。


噛む。


硬い。


味は、

しない。


それでいい。


“食べた”という事実だけ、

体に渡す。


歩く。


朝の街道は、

静かだ。


だが――

静かすぎる。


(……油断するな)


自分に、

言い聞かせる。


足取り。


昨日より、

一定だ。


(……慣れてきた)


それが――

危ない。


昼前。


また、

喉が渇く。


(……まだ、

早い)


だが――

判断が、

一瞬遅れた。


沢に、

気づく。


昨日と、

同じような音。


同じような、

澄み方。


(……同じだ)


その考えが、

浮かんだ時点で――

間違いだ。


足を、

止める。


見る。


石。


流れ。


影。


(……違う)


上流に、

踏み跡。


新しい。


一人じゃない。


(……先客か)


時間は、

分からない。


だが――

“今はいない”とも、

言い切れない。


引く。


すぐ、

引く。


水は――

諦める。


(……今日は、

持たせる)


判断は、

正しかった。


だが――

胸が、

少しざわつく。


(……迷ったな)


自分の中に、

“楽をしたい”が

混じった。


それが、

一番怖い。


午後。


空が、

曇る。


風が、

変わる。


(……降るか)


雨は――

味方にも、

敵にもなる。


足跡は、

消える。


だが――

自分の音も、

増える。


(……慎重に)


その時。


前方。


道の脇。


布切れ。


(……?)


近づかない。


見ただけで、

判断する。


色。


織り。


(……人の物だ)


捨てたのか。

落としたのか。


それとも――

誘いか。


拾わない。


見なかったことにする。


歩く。


心拍が、

少し早い。


(……一人だ)


改めて、

思う。


誰も、

助けない。


誰も、

止めない。


間違えたら――

それで終わりだ。


夕方。


空が、

少し明るくなる。


雨は――

来なかった。


(……運は、

まだある)


だが――

運に頼るな。


今日の反省を、

一つだけ刻む。


(……“慣れ”た時に、

一番死ぬ)


前世で、

何度も見た。


今世では――

自分が、

そうならないように。


夜。


また、

火は使わない。


水を、

少しだけ飲む。


喉を、

潤す程度。


空を、

見る。


星は、

少ない。


だが――

確かに、

前に進んでいる。


ローディス王国領の街道。


少年は、

今日も生き延びた。


それは――

強さじゃない。


間違えなかった、

というだけの結果だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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