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第57話 夜は、味方じゃない

連続投稿です。

55話からお読みください。


夕方。


日が、

傾き始めた。


(……早いな)


村にいれば、

まだ作業の時間だ。


だが――

外では違う。


暗くなる前に、

“場所”を決めないといけない。


道から、

少し外れる。


低い窪み。

風が弱い。


(……ここ)


枝を、

集める。


火は――

使わない。


煙。

匂い。

目立つ。


(……我慢だ)


袋から、

布を出す。


地面に、

敷く。


背中が、

痛む。


肩も、

重い。


(……昼の、

転び方が悪かった)


木剣を、

手の届くところに置く。


意味は薄い。


だが――

無いより、

マシだ。


日が、

落ちる。


世界が、

一気に変わる。


音が――

増える。


虫。

獣。

風。


全部が、

近い。


(……村は、

静かだったな)


思い出す。


母の鍋の音。


父の足音。


今は――

ない。


膝を、

抱える。


眠るには、

早い。


だが――

起きているのも、

辛い。


(……気を、

落とせ)


“気”を、

薄く広げる。


周囲を、

感じる。


近い。

遠い。

動く。

止まる。


(……全部が、

敵じゃない)


自分に、

言い聞かせる。


その時。


遠くで――

鳴き声。


一つ。

低い。


(……さっきの獣)


距離は、

ある。


だが――

“いる”。


体が、

硬くなる。


(……夜は、

選ばせない)


昼なら、

逃げられる。


夜は――

偶然に、

当たる。


歯を、

食いしばる。


(……耐えろ)


戦うな。

逃げろ。

隠れろ。


それが、

今の自分だ。


時間が、

過ぎる。


鳴き声は、

遠ざかった。


代わりに――

冷えが来る。


体温が、

奪われる。


(……甘かった)


布一枚じゃ、

足りない。


震えが、

止まらない。


(……寝るな)


眠れば、

朝は来る。


だが――

深く眠れば、

死ぬ。


半分だけ、

目を閉じる。


半分だけ、

起きる。


そんな眠り。


ローディス王国領、

王道沿い。


少年は、

初めて知った。


夜は――

誰の味方でもない。


そして、

村の灯りが、

どれほどの価値だったかを。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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