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第54話 前夜

連続投稿です。

52話からお読みください。


夜。


家の灯りは、

いつもより早く落ちた。


明日も、

畑がある。


明日も、

村は動く。


――その“明日”に、

自分はいない。


袋を、

確かめる。


水。

保存食。

布。

木剣。


(……足りない)


だが――

これ以上は、

持てない。


納屋。


最後の修行。


型を、

一つ。


呼吸を、

一つ。


“気”を、

芯に。


“魔力”は、

使わない。


今夜は、

静かに。


家に戻る。


母の部屋の前で、

足が止まる。


声を、

かけない。


父の背中を、

思い出す。


(……言わない人)


布団。


天井。


前世の、

終わりを思い出す。


孤児たち。

笑顔。

別れ。


(……また、行くのか)


違う。


今度は――

戻る。


目を閉じる。


呼吸を、

整える。


眠りは、

すぐ来なかった。


だが――

恐怖は、

なかった。


ローディス王国領の辺境、

ミルネ村。


少年は、

眠らないまま、

夜を越える。


それは、

逃避の夜ではない。


選んだ夜だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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