第43話 父の背中
連続投稿です。
41話からお読みください。
夜明け前。
家の外で、
ハルトは空を見ていた。
星が、
薄れる時間。
(……妙だ)
井戸。
家畜。
森。
どれも、
壊れてはいない。
だが――
落ち着かない。
鍬を、
手に取る。
武器じゃない。
だが――
“守るための道具”だ。
(……この村は、
強くない)
兵も、
魔法もない。
あるのは――
暮らしだけだ。
息子を見る。
眠っている。
静かだ。
(……大きくなった)
体つきだけじゃない。
“立ち方”が違う。
何も持っていないのに、
地に立っている。
(……戦える)
直感だった。
だが――
聞かない。
ハルトは、
力を誇る男じゃない。
守る者は、
知っている。
力を持つ者ほど、
軽々しく語らないことを。
リネアが、
戸口に立つ。
「……変ね」
「ああ」
「……何か、
起きる?」
ハルトは、
少し考え――
首を振る。
「起きないように、
願う」
それだけ。
朝日が、
昇る。
今日も、
畑に出る。
ハルトは、
何も知らない。
だが――
“備える”という選択を、
すでに取っていた。
ローディス王国領の辺境、
ミルネ村。
剣も、
魔法もない男は、
それでも――
守る覚悟だけは、
誰にも負けていなかった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




