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第42話 説明できないこと

連続投稿です。

41話からお読みください。


それは、

本当に些細な出来事だった。


朝。


村の井戸で、

水が濁った。


土が混じったわけじゃない。

臭いもない。


ただ――

“重い”。


「……昨日までは、

こんなことなかった」


村人が、

首をかしげる。


(……魔力が、

沈んでる)


見なくても、

分かる。


井戸の底に、

何かが“溜まっている”。


だが――

悪意は、

ない。


昼。


鶏が、

鳴かない。


逃げたわけでも、

死んだわけでもない。


ただ――

沈黙。


(……同じだ)


夕方。


子どもが、

森で転んだ。


怪我は、

軽い。


だが――

「誰かに、

見られてた」


そう言った。


(……見てた、

だけか)


夜。


村は、

少しだけ、

ざわついた。


「……魔獣?」


「……冒険者を、

呼ぶか?」


父が、

小さく言う。


「……急ぐな」


母は、

黙って、

鍋をかき混ぜる。


(……皆、

不安なんだ)


一人、

外に出る。


月明かり。


森の縁。


“気”を、

静める。


“魔力”を、

薄く広げる。


(……やっぱり、

弱い)


昨日の、

精霊の“残り”。


だが――

数が、

増えている。


(……干渉しすぎた、

か?)


否。


自分は、

何もしていない。


(……人が、

増えた)


冒険者。


魔法。


人の魔力が、

森に“痕”を残した。


それが、

生態を、

少し乱している。


(……だから、

説明できない)


原因は、

“悪”じゃない。


“便利さ”だ。


村に、

戻る。


誰にも、

言わない。


今は、

まだ。


(……動くなら、

もっと知ってからだ)


布団に入る。


母の、

呼吸。


父の、

寝返り。


(……守る)


それだけは、

決めている。


ローディス王国領の辺境、

ミルネ村。


説明できない出来事は、

いつも――

理由が分からないから、

怖い。


そして、

少年は知っていた。


“分からない”の正体に、

もう手が届き始めていることを。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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