第40話 小さな異変
連続投稿です。
38話からお読みください。
朝。
空気が、
少しだけ、
澱んでいた。
(……昨日より、
近い)
森の縁。
薪拾いの、
ついで。
誰にも、
怪しまれない理由。
(……ここだ)
一歩、
踏み込む。
森の中は、
静かだ。
だが――
“流れ”が、
乱れている。
魔力が、
絡まっている。
細い。
弱い。
だが――
不自然。
(……魔獣、
じゃない)
魔獣なら、
もっと荒い。
これは――
“残り香”。
さらに、
進む。
切り株の影。
そこに――
小さな何かが、
震えていた。
子犬ほどの、
大きさ。
毛は、
淡く光る。
(……精霊?)
前世には、
存在しない概念。
だが――
この世界では、
聞いたことがある。
“魔力が形を持つ存在”。
こちらに、
気づく。
逃げない。
だが――
近づかない。
(……敵意、
なし)
“気”を、
落とす。
“魔力”を、
薄く、
周囲に馴染ませる。
(……怖くない)
伝わるか、
分からない。
それでも――
やる。
精霊は、
少しだけ、
震えを止めた。
(……弱ってる)
触れない。
助ける、
と決めない。
ただ――
“邪魔をしない”。
時間が、
過ぎる。
精霊は、
森の奥へ、
溶けるように消えた。
(……これで、
いい)
戦わない選択。
干渉しない判断。
それも、
力の使い方だ。
村へ戻る。
何も、
起きていない。
だが――
確信があった。
(……森は、
生きている)
魔力は、
道具じゃない。
生態だ。
夜。
星を見る。
今日の出来事を、
言葉にしない。
まだ、
誰にも。
ローディス王国領の辺境、
ミルネ村。
一人の少年は、
初めて異界の存在に触れ――
何もしないことを選んだ。
それは、
後に彼を救う判断だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




