第39話 変わらない村、変わった視点
連続投稿です。
38話からお読みください。
朝。
いつも通りの、
ミルネ村。
鶏が鳴き、
畑に人が出る。
父は、
鍬を担ぎ、
母は、
朝の支度。
何も、
変わらない。
……はずだった。
(……音が、
多い)
風。
土。
人の動き。
全部が、
“分かる”。
聞こえる、
ではない。
“把握できる”。
(……意識が、
広がっている)
冒険者と話した後から、
何かが、
整理された感覚があった。
(……魔力の流れが、
分かる気がする)
見る、
ではない。
“感じ分ける”。
畑の土は、
重い。
森の縁は、
ざわつく。
人の周りは、
揺れがある。
(……全部、
違う)
今までは、
ただの“気配”だった。
今は、
意味を持つ。
昼。
村の子どもが、
転んだ。
膝を、
すりむく。
反射的に、
手を伸ばし――
止める。
(……今は、
やめろ)
代わりに、
肩を貸す。
「……大丈夫?」
「うん……」
母が、
礼を言う。
それで、
いい。
夜。
一人、
家の外。
森の方向を見る。
(……魔獣、
ではない)
だが――
何かが、
ある。
小さい。
弱い。
だが――
確かに、
“異質”。
(……まだ、
遠い)
剣は、
抜かない。
魔法も、
使わない。
“気”を、
静める。
“魔力”を、
流す。
(……違いを、
知る)
それだけで、
今は十分だ。
家に戻る。
母が、
言う。
「……最近、
静かね」
「……考え事」
「そう」
それ以上、
聞かない。
父は、
火を見ている。
何も、
言わない。
それで、
いい。
ローディス王国領の辺境、
ミルネ村。
世界は、
変わっていない。
だが――
少年の“見え方”は、
確実に変わっていた。
それは、
力が増えた証ではない。
理解が、
始まった証だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




