第3話 辺境の村
書き溜めがあるので
しばらくは毎日投稿頑張ります。
この村は、小さい。
家の数は多くなく、
見渡せば畑と森、
それから細い一本道が一本、外へと伸びているだけだ。
(……王国領とはいえ、端も端じゃな)
赤子の目線でも分かるほど、
人の出入りは少ない。
行商が訪れるのは年に数度。
騎士や役人の姿など、見かけない。
父は、この村で生まれ育った農夫だ。
祖父の代から受け継いだ畑を耕しているが、
土地は決して肥えているとは言えなかった。
「今年も、あまり良くないな……」
畑を見つめながら、
父がぽつりと零す。
母は、その言葉に何も返さない。
心配をかけまいとしているのだろう。
だが、その表情で分かる。
(……厳しいな)
村全体が、特別に貧しいわけではない。
だが、決して豊かでもない。
ただ――
余裕がない。
一度天候を外せば、
一度病に倒れれば、
生活は簡単に傾く。
「でも、あの子がいるもの」
母はそう言って、
わしを抱く腕に、ほんの少し力を込めた。
「この子のためなら、頑張れるわ」
父は一瞬だけ困ったように笑い、
それから、強くうなずく。
(……二人とも、覚悟を決めておるな)
前世で、
わしは孤児たちから、何度も聞いた。
――親になれなかった親の話を。
逃げた者。
諦めた者。
責めるつもりはない。
生きるだけで精一杯の世界も、確かに存在する。
だが――
この二人は、逃げていない。
畑仕事の合間、
父は村人たちと作物の話を交わしている。
「今年は税が重いらしいぞ」
「またか……」
王国の中心から遠いこの村でも、
税だけは平等に徴収される。
(守ってはくれぬが、取るものは取る……か)
父は、不満を口にしない。
文句を言っても、状況は変わらないと知っているからだ。
ただ、黙々と働く。
その背中を、
母は少し離れた場所から見ていた。
「無理してほしくないけど……」
小さく零れた声は、
誰にも届かない。
夜。
ランプの灯りの下で、
母はわしをあやしながら、布を繕っている。
何度も縫い直された跡。
新しい服など、簡単には手に入らないのだろう。
(……それでも、手を抜かぬ)
その指先は、不器用だが、丁寧だった。
わしは静かに、意識を内側へ向ける。
まだ修行と呼べるほどのものではない。
だが、毎日ほんの少しずつ、
“気”と“魔力”に触れている。
(今は……力を溜める時期じゃ)
焦る必要はない。
だが、止まる理由もない。
――いつか必ず、
この二人を、
この村を、
守れるだけの力を手に入れる。
その決意は、
日々の暮らしの中で、
静かに、しかし確実に強くなっていった。
辺境の村。
貧しい家。
だが、
確かに根を張る暮らしが、ここにある。
ここから先、
すべては、始まっていく。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




