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第35話 形を持つもの


それは、

偶然のようで、

必然だった。


村の倉の整理を、

父に頼まれた日。


古い道具。

壊れた農具。

錆びた刃物。


その奥に――

一本の木剣があった。


短い。

軽い。

子ども用だ。


「……昔のものだ」


父が言う。


「護身の真似事に使ってた」


(……剣、か)


前世では、

数え切れないほど握った。


だが――

今世では、初めてだ。


「……触ってみるか?」


父の声は、

静かだった。


「……いいの?」


「遊び程度ならな」


それで、

十分だった。


家の裏。


人の目が、

届きにくい場所。


木剣を、

握る。


(……軽い)


だが――

“形”がある。


ただの動きが、

意味を持ち始める。


構える。


前世の型を、

そのままは使わない。


体が、

違う。


骨格も、

筋も。


(……今の体に、

合わせろ)


ゆっくり。


振る。


空を切る音が、

小さく鳴った。


(……悪くない)


父は、

少し離れて見ていた。


「……誰に、

教わった?」


「……誰にも」


嘘ではない。


今世では。


父は、

それ以上聞かなかった。


しばらくして、

母が声をかける。


「……ごはんよ」


木剣を、

下ろす。


その瞬間――

“魔力”が、

指先に、

わずかに集まった。


(……?)


意識していない。


だが――

木剣が、

ほんの少しだけ、

軽く感じた。


(……これか)


“気”で動かす身体。

“魔力”で支える外。


混ざらない。


だが――

同じ動作に、

乗る。


(……技になる)


夜。


一人、

納屋の影で、

再び構える。


今度は、

“気”を意識する。


次に、

“魔力”を意識する。


――同時には、

使わない。


だが――

連続する。


(……まだ、

入口だ)


それでいい。


これは、

戦うためじゃない。


“扱う”ためだ。


剣を。


力を。


そして――

自分自身を。


ローディス王国領の辺境、

ミルネ村。


一人の少年は、

初めて“技”に触れた。


それは、

師も、

道場もない始まり。


だが――

確かに、

積み上がる一段目だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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