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第30話 森が、近くなる

連続投稿です。

29話からお読みください。


それは、

朝のことだった。


村の外れで、

牛を放していた男が、

走って戻ってきた。


「……森が、

おかしい」


その一言で、

空気が変わる。


「音が、

違う」


「鳥が、

いねえ」


ざわめきが、

広がる。


(……来たか)


わしは、

家の前から、

森の方を見る。


いつもなら、

ただ暗いだけの森。


だが――

今日は、

“重い”。


魔力の流れが、

淀んでいる。


(……濃いな)


まだ、

溢れてはいない。


だが――

確実に、

近づいている。


父たちが、

集まる。


武器と呼べるものは、

農具ばかりだ。


「……入るな」


父の声は、

低い。


「今日は、

森に近づくな」


母が、

わしの肩を、

そっと引く。


「……聞こえた?」


「……うん」


家に戻る。


戸を閉めても、

森の気配は、

消えない。


昼。


子どもたちは、

外に出ない。


遊び声が、

ない。


それだけで、

異常だった。


(……まだ、

出てこない)


だが――

“境界”が、

揺れている。


夕方。


村の見張りが、

戻ってきた。


「……足跡が、

あった」


獣のもの。


だが――

大きい。


(……魔獣だな)


前世の知識が、

冷静に判断する。


今世の体は、

少しだけ、

強張る。


(……使うな)


まだだ。


ここで力を使えば、

“守った”ではなく、

“見つかる”。


夜。


灯りは、

早めに落とされた。


家族が、

一つの部屋に集まる。


父は、

何も言わない。


母は、

何も聞かない。


それが――

この家の、

やり方だ。


布団の中。


目を閉じる。


(……森は、

もう遠くない)


だが――

村は、

まだ無事だ。


その“まだ”を、

伸ばすために。


わしは、

静かに呼吸を整えた。


“気”と“魔力”が、

いつもより、

近い。


混ざらない。


だが――

離れもしない。


ローディス王国領の辺境、

ミルネ村。


森が、

一歩近づいた夜。


少年は、

初めて

「力を使わない覚悟」を

強く意識した。


それは――

戦いよりも、

難しい選択だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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