第28話 父は、何も言わなかった
連続投稿です。
26話からお読みください。
――父親視点――
最近、
息子の動きが、
変わった。
早い。
正確。
だが――
派手ではない。
(……意識して、
抑えている)
畑で働きながら、
何度も目に入る。
今日も、
子どもたちと遊んでいた。
途中で、
一人だけ、
先に帰ってきた。
顔は、
平静。
だが――
歩幅が、
少しだけ、狭い。
(……何かあったな)
夜。
食事の席。
息子は、
いつも通りだ。
笑い、
黙り、
食べる。
リネアも、
何も言わない。
――なら、
言わないのが、
正解だ。
子どもには、
子どもの世界がある。
だが――
危険は、
親が引き受ける。
夜更け。
外に出て、
村を見回る。
森の方から、
わずかな違和感。
魔獣の気配――
までは、いかない。
だが、
“揺れ”だ。
(……早いな)
王国は、
まだ来ない。
だが――
世界は、
確実に動いている。
家に戻る。
戸の向こうで、
息子の寝息が聞こえる。
(……この子は、
選ぶだろう)
力を、
振るうか。
隠すか。
出るか。
残るか。
親が、
決めることじゃない。
だが――
選べるようにするのは、
親の役目だ。
ハルトは、
何も言わなかった。
それが、
今できる、
最大の守りだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
小さな選択の積み重ねを意識して書いています。
何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。




