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第26話 変わらない日々、変わっていくもの


それから――

時間は、少しずつ進んだ。


劇的な出来事は、

何も起きていない。


ミルネ村は、

相変わらず貧しく、

相変わらず静かだ。


朝になれば、

父は畑へ向かい、

母は家の中で手を動かす。


わしは、

その間を行き来する。


水を運び、

薪を拾い、

時々、転ぶ。


子どもとして、

自然な日常。


(……悪くない)


体は、

確実に育っていた。


力が増し、

走れば息が長くなる。


だが――

それ以上に変わったのは、

“内側”だ。


夜。


誰にも見られない場所で、

わしは呼吸を整える。


前世の“気”は、

相変わらず、

体の中心にある。


今世の“魔力”は、

周囲に、

薄く、広く。


以前よりも――

互いの距離が、

近くなっていた。


(……混ざらないが、

拒まなくなった)


それでいい。


無理に合わせれば、

壊れる。


前世で、

何度も見てきた。


だから、

待つ。


“成長”というものは、

急ぐほど、

遠ざかる。


ある日。


父が、

鍬を置いて、

こちらを見た。


「……大きくなったな」


突然の言葉。


「そう?」


母が、

微笑む。


「前より、

しっかり立ってる」


(……そう見えるか)


自覚は、

あまりない。


だが――

周囲は、

気づき始めている。


村の子どもたちと、

走るとき。


少しだけ、

速い。


石を投げれば、

少しだけ、

遠くまで飛ぶ。


(……少し、

目立ち始めている)


良くない兆候だ。


だが――

抑えすぎても、

不自然になる。


(……“少しだけ”だ)


その塩梅を、

学ぶ時期に入った。


夕暮れ。


村の外れで、

風を感じる。


遠くの森は、

変わらず深い。


だが――

魔力の流れが、

時折、揺れる。


(……まだ、

来ない)


レグが見た世界は、

ここには、

まだ届いていない。


だが――

“まだ”だ。


家に戻る。


灯りが、

暖かい。


母の声。

父の咳払い。


(……守りたい、

わけじゃない)


英雄の言葉は、

似合わない。


ただ――

ここを、

失いたくない。


それだけだ。


ローディス王国領の辺境、

ミルネ村。


静かな日々の中で、

一人の少年は、

確実に“次の段階”へ

足を踏み入れていた。


それは、

剣を握る前。


魔法を放つ前。


――力を、

隠しながら使う、

という段階。


物語は、

ゆっくりと、

だが確実に、

深みに入っていく。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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