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第23話 強くなる理由は、まだ小さい


夜。


家族は、もう眠っている。


外に出ると、

風が冷たかった。


星は、

変わらずそこにある。


(……世界は、

何も変わっていない)


だが――

わしは、変わった。


行商人の言葉。

魔獣の気配。

王国の影。


すべてが、

この村に、

じわじわと近づいている。


(……前世なら)


前世なら、

理由は簡単だった。


強者と戦うため。

己を高めるため。


それだけで、

拳を振る理由になった。


だが――

今世では、違う。


わしは、

家の灯りを見る。


小さな家。

貧しい。

だが――

帰る場所だ。


(……守る、か)


だが、

“守る”という言葉は、

少し大きい。


英雄の言葉だ。


わしは、

英雄ではない。


まだ、

子どもだ。


(……もっと、小さくていい)


父が、

畑に出るために、

毎朝立ち上がる理由。


母が、

食事を用意する理由。


それは――

誰かを救うためじゃない。


今日を、

生きるためだ。


(……強くなる理由も、

それでいい)


誰かに勝つためじゃない。

名を残すためでもない。


「……選べるようになるためだ」


声に出して、

そう言った。


戦うか、

退くか。


隠すか、

明かすか。


守るか、

離れるか。


力がなければ、

選択肢は、

最初から用意されない。


(……それだけで、十分だ)


わしは、

静かに呼吸を整える。


“気”が、

体の芯を温める。


“魔力”が、

夜の空気と混じる。


まだ、

混ざらない。


だが――

互いを、拒まない。


(……焦らず、積む)


明日も、

畑の端で、

たいそうをする。


遊び、

転び、

笑う。


それでいい。


強さは、

その先に、

自然と乗ってくる。


夜風が、

少し優しくなった。


家に戻る。


戸を閉める前、

もう一度、

星を見る。


(……この世界で)


ノルエルディアで、

ローディス王国領の辺境、

ミルネ村で。


わしは、

生きる。


それが、

今の答えだ。


辺境の村で、

一人の幼子は、

初めて“志”を持った。


それは、

何かと戦う誓いではない。


ただ――

選ぶための、

静かな決意だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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