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第19話 誰も知らず、何かが変わる

連続投稿です。

17話からお読みください。


翌朝。


村の空気は、

いつもと同じようで、

少しだけ違った。


声が、低い。

動きが、早い。


「……今日は、

畑の奥は後回しだ」


「子どもは、

村の中で遊ばせろ」


理由は、

はっきり言われない。


だが――

皆、察している。


(……動いたな)


父は、

朝早くから出ていた。


見回りの相談だろう。


母は、

何も聞かない。


聞かないが――

目は、よく動いている。


(……母も、

気づいておる)


昼。


村の男たちが、

集まっていた。


農具を手に、

森の方を見ている。


剣はない。

鎧もない。


それでも――

引かない。


(……この村なりの、

戦い方だ)


わしは、

子どもたちと一緒に、

少し離れた場所で遊ぶ。


トゥルが、

小声で言った。


「なあ……

なんか、へんだよな」


「うん……」


ミアも、

不安そうだ。


「……だいじょうぶ」


わしは、

そう言った。


根拠はない。


だが――

今は、それでいい。


夕方。


父が、

疲れた顔で帰ってきた。


「……どうだった?」


母が、

短く聞く。


父は、

首を振った。


「……まだだ」


それ以上、

語らない。


夜。


見回りの足音が、

外を通る。


普段なら、

気にも留めない音。


だが、

今日は違う。


(……守られておる)


それを、

はっきりと感じる。


わしは、

静かに呼吸を整える。


“気”と“魔力”が、

体の中で、

落ち着いて巡る。


(……今は、

力を出す時ではない)


それを、

改めて確認する。


数日後。


森からの被害は、

増えなかった。


減りもしないが、

広がらない。


村の大人たちは、

それで十分だった。


「……このまま、

様子を見る」


そんな空気。


誰も、

原因を口にしない。


誰も、

最初に気づいた者を、

探さない。


(……それで、いい)


名乗らず、

前に出ず、

役目だけを果たす。


前世なら、

選ばなかった道だ。


だが――

今世では、

正しい。


ある夜。


父が、

酒も飲まず、

静かに言った。


「……森の奥、

しばらく入るな」


わしは、

頷く。


それだけで、

話は終わった。


父は、

もう何も聞かない。


だが――

その背中は、

少しだけ、違って見えた。


(……信じたな)


確信ではない。


だが――

疑ってもいない。


ローディス王国領の辺境

ミルネ村で、

一人の幼子は、

力を使わずに、

状況を動かした。


誰も知らない。


評価もない。


だが――

確かに、

世界は一歩、

未来へずれた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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