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第13話 修行は、まず身体から

連続投稿です。

11話からお読みください。


夜明け前。


家の中が、

まだ静かな時間。


わしは、

ゆっくりと目を覚ました。


呼吸を整え、

体の感覚を確かめる。


(……昨日より、軽い)


気の巡り。

魔力の流れ。


どちらも、

無理に動かしてはいない。


今は、

“感じる”だけだ。


布団を抜け出し、

外へ出る。


朝露が、

土を冷やしている。


(……よし)


修行は、

派手である必要はない。


まずは――

身体だ。


畑の端で、

静かに立つ。


足の裏。

地面の感触。


前世で身につけた“型”を、

思い出す。


だが、

そのままは使わない。


この体は、

まだ小さい。


(……合わせろ)


ゆっくりと、

膝を曲げる。


重心を、

下へ。


無理はしない。

限界の、一歩手前。


その姿勢のまま、

呼吸を続ける。


息を吸い、

吐く。


吸いすぎない。

吐きすぎない。


すると――

体の奥が、

じんわりと温かくなる。


“気”だ。


だが、

そこに、

微かな違和感が混じる。


(……魔力)


この世界では、

空気そのものに、

魔力が含まれている。


それは、

前世にはなかった感覚。


(……混ぜるな。並べろ)


今は、

融合ではない。


“気”は体の内。

“魔力”は、外。


二つを、

同時に感じるだけでいい。


時間は、

ゆっくり過ぎる。


足が、

少し震え始めた。


(……ここまで)


無理をすれば、

成長は止まる。


姿勢を解き、

軽く体をほぐす。


その時。


「……何してるの?」


振り向くと、

母が立っていた。


朝の支度の途中らしく、

まだ眠そうだ。


(……見られたか)


「……たいそう」


短く答える。


嘘ではない。


母は、

少し首を傾げたが、

それ以上は聞かない。


「体、冷えるよ」


そう言って、

肩に布を掛けてくれた。


(……ありがたい)


修行は、

続けられることが、

何より大事だ。


朝食。


いつもと同じ、

質素な食事。


だが、

今日の一口は、

違って感じた。


(……力になる)


父は、

わしの食べ方を、

少しだけ見ていた。


「……よく食うな」


それだけ言って、

頷く。


(……気づいておるな)


だが、

口には出さない。


それでいい。


日中は、

いつも通り過ごす。


走り、

遊び、

転ぶ。


だが――

体の使い方が、

少しずつ変わっていた。


無駄な力が、

減っている。


夜。


再び、

静かな時間。


今日の修行を、

振り返る。


(……焦るな)


強くなる道は、

遠く、長い。


だが――

確かに、

一歩踏み出した。


辺境のミルネ村で、

一人の幼子は、

剣でも魔法でもない、

“基礎”を積み始めた。


それは、

誰にも気づかれないほど、

小さな変化。


だが――

確実に、

未来へ繋がっていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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