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第102話 積み重なる日々

連続投稿です。

100話からお読みください。


朝。


ギルドの扉を押すと、

もう説明はいらなかった。


掲示板の下段。

銅貨四枚前後。

距離は短く、期限は日没前。


依頼書が、

最初から一枚、受付の端に置かれている。


「……それ、今日の分」


受付の声は淡々としている。


頷いて受け取る。

名前を書く。

場所を確認する。


それだけ。


町外縁の配達。

倉の整理。

商人の使い。


内容は違う。

だが――

やることは同じだ。


昼前に終わり、

署名をもらい、

戻る。


不備なし。

遅れなし。

言い訳なし。


「問題なし」


その一言と、

銅貨が台に置かれる。


それを、

何日も繰り返した。


失敗はない。

突出もしない。


誰にも怒られず、

誰にも褒められない。


同年代の姿が、

少しずつ減っていく。


昨日まで隣にいた少年が、

今日は来ていない。


理由は聞かない。

聞かなくても、分かる。


――続かなかった。


夕方。


ギルドの中は、

少し静かになった。


上段の札は、

相変わらず遠い。


銀貨。

森。

人数指定。


見るだけで、

条件の重さが分かる。


(……今の自分では、行かない)


それは、

臆病さではない。


判断だ。


外へ出る。


町の空は、

もう慣れた色になっていた。


宿の軒下。

パンの匂い。

行き交う人の足音。


ここで生きる方法は、

もう分かっている。


銅貨四枚。

水と、パンと、

寝る場所。


今日を終わらせるだけなら、

十分だ。


だが――


夜。


一人になった時、

胸の奥に残るものがある。


(……これを続けて)


(……俺は、何になれる)


安全。

確実。

問題なし。


それは、

「生き延びる」には正しい。


だが――

「守る」には、足りない。


村を出た理由を、

思い出す。


静かに。

何度も。


拳を握り、

すぐに開く。


(……次を、選ぶ時が近い)


まだ、急がない。


だが――

このままでは、

止まる。


ローディス王国領の町、

オーレム。


少年は、

数日分の安全を積み重ねながら――

次に進めない自分を、

はっきりと自覚し始めていた。


それは、

不満ではない。


焦りでもない。


ただ一つの、

静かな問いだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

小さな選択の積み重ねを意識して書いています。

何か感じた点があれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

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