第八話「私という少女」
※間違って、一話飛ばして投稿しまいました。
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
「マリーの気持ちはとても嬉しいわ。 ただ--」
黄金色の瞳が、私の感情の揺らぎに反応し強く輝く。
「わたくしと約束してちょうだい、マリー。
……あなたの命は、他の誰でもなく、あなただけのものなのよ? 」
ハッとして目を見張ったマリーに、私は少し強い口調で続ける。
「例え主人であるわたくしに何があろうとも、あなたが自分自身を大切にしてくれないと、死んでも死にきれないわ! そもそも、後を追って死のうだなんて……わたくし、絶対に許さないわ! 」
「お、お嬢様……」マリーは呆気にとられて固まっていた。
ベッドにちょこんと座って、腰に手を当てて凄んでくる私に、相当驚いているようだ。
(もう、マリーったら! 確かに忠誠心は素晴らしいけど、その考え方は絶対にダメ! )
時代背景を考えれば、至極当然のことなのかもしれない。
それでも、十八歳まで前世を生きてきた私は、他人だけではなく、まず自分自身を大切にすることの大切さを知っているから。
どうしても、マリーにそれをわかってほしかったのだ。
「ずっと手を握っていてくれたのでしょう? もう大丈夫だから、あなたも休まなくてはダメよ? 」
フッと表情をやわらげて私が言うと、マリーも困ったように眉尻を下げながら微笑んでくれたのだった。
(――私を主として支えてくれるマリーのためにも強くならないと。
この先『公爵令嬢』の立場を武器にする時が必ず来るだろう。 その時のためにも、誰からも侮られない完璧な貴族令嬢にならなくちゃ)
その時の私は、前世の知識があれば概ね何とかなると、どこかで高を括っていた。
さすがに、実践が必要なダンスや貴族的な社交術などは、マリーにこれからみっちり鍛えてもらわなくてはと考えていた。
しかしこの時、私は気づいていなかったのだ。
いや、色んなことが一度に起こりすぎて忘れていたというか……。
マナー云々以前に、前世で女子高生だった自分が、現在七歳児の姿になっていることに。
「お嬢様――こんなにお言葉を話されるのは、わたくしが知る限り初めてでございます!マリーは嬉しゅうございます 」
マリーは、泣き顔に満面の笑みを浮かべながらジアの手を両手で優しく撫でてくれる。
(――ギクゥッッ‼︎ やばい、そうじゃん! ジアのキャラ! キャラの尊重!)
共有しあった記憶にあるジアは、ほとんどマリーと目も合わさないし、会話もしない子供だったことを思い出し、内心冷や汗ダラダラである。
「お嬢様が、公爵家からわたくしを守るために、必要最低限の関わりしか持たぬよう気を遣われていた事には気付いておりました。 お小さいお嬢様が必死に守ろうとしてくださっていたそのお優しいお気持ちを尊重し、今までわたくしも陰からお嬢様をお支えする形でお世話させていただいて居たのでございます」
マリーは、痛みを堪えるような表情で過去を思い返しながら、ゆっくり言い聞かせるように話してくれる。
そして、強い意志の籠ったスモーキーグリーンの瞳が、真っ直ぐ私に向けられる。
「ですが、それではいけないと、今回の事で思い知りました。
わたくしが間違っておりました。 そして、決めたのでございます……! これからは、このマリーにもお側でお嬢様を守らせて下さいませ 」
マリーの真っ直ぐな言葉がうれしくて、同時に、こんな経験は初めてなので少し戸惑ってしまう。
そんな私の心を読んだのか、マリーがすこしおどけたように言う。
「お嬢様、わたくしはそんなにやわではございませんよ! 」
ふんす! とばかりに両手で拳を作ったガッツポーズでアピールしてくるマリーのことが、私はもう大好きになっていた。
(――お母さんみたい)
心から自分を心配し、寄り添ってくれる存在が二人もいる。 その事実に、心が満たされていくのを感じていた。
(――ジア見ててね。 約束通り、私たちの幸せを必ず掴みとるから! もちろん、マリーも一緒にね! )
心の中で、ジアに語り掛ける。
すると、いつも無表情な『ジア』の口元が、ほんの少し綻んだのだった。
(まあお嬢様…! なんて愛らしい笑顔でしょう )
マリーは、目覚めてからのジアの変化を敏感に察し、かすかな違和感を抱いていた。
しかし、すぐに考えを改めた。
(まだお小さいのに、あんな恐ろしい目に遭ったのですもの……まだ混乱されているのかも。 お嬢様の笑顔がもっと増えるよう頑張らなくちゃ! )
主と同じく、こちらも決意を新たにするのだった。
◇◇◇
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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