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第三話「落ちる少女」

はじめまして、宵月の兎です。

この作品を読んでくださってありがとうございます。

※暴力描写があります。


ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。


「ーーくっ……!!」


 咄嗟に胸の前で腕をクロスさせてガードしたが、下から救い上げるような強烈な蹴りが、ガードの下の鳩尾にもろに入り、呼吸が出来なくなった。


『肋骨が砕けて肺に刺さったかも――』と思った瞬間、後ろの錆びた柵が『バキンっ!』と音をたてて外れ、私は空中に投げ出された。 


――ヤバい!


 身体が宙に浮いた瞬間、視界いっぱいに満天の星空が広がった。


――あれ、思ったより高い場所から落てる――


『もう、これは夢だろう』と、私は思考を停止させていた。 何もかもが突然で、訳が分からないままに死ぬ……そんな悪夢には慣れている。


 ふと、耳元でかすかに、『たいへん!』『助けなきゃ、早く!』と、鈴を転がすような美しい音に交じって囁くような声がする。


 風に乗る、優しい花の香りと土の匂いを背中越しに感じながら、わたしの意識はふっと途切れた。



    ***



 私は『吉岡 栞』


 卒業を間近に控えた高校三年生。

卒業後は、歯医者さんの受付に就職が決まっている。


 本当は、ファッションやヘアメイクの勉強がしたかったけど、ど田舎の米農家の四人兄弟の長女である私には、進学を希望する事は許されていなかった。


『大人の価値観教』


 私の子ども時代は、実家の宗教のような価値観の洗脳に染まれず『いっそ入信できたら楽だったのに』と思うような日常を過ごしていた。


 虐待されていた訳ではない。

親兄弟の仲も悪くはなかった。

でもいつも孤独で、苦しくて、寂しかった。


 小さい頃から、何度もお星さまに祈った。


『お母さんに愛されますように。 誰よりも愛される、可愛い女の子になれますように』


 ずっとバカなふりをしていた。 鈍感でなきゃ壊れてしまいそうだった。


「栞っ! すぐメソメソして面倒くさい! あんただけ橋の下で拾ってきた子みたい!」


−−何、それ。 それが母親の言うセリフ?


 私はただ――他の子みたいに褒められたかっただけ… 

愛されたかっただけなのに――


『家族ってなんなの?』


 答えのない問いを抱え、私は笑わなくなった。

その頃からだろうか、物事を俯瞰して感情と切り離してしまう癖がついたのは。


 最近はもう、あまり家には寄り付いていなかった。


 家にも学校にも居場所がなかった私は、自立して自由になりたいと強く願っていた。


愛しているから辛かったんだ。


この気持ちが愛じゃないと知るのが怖かった。



 ****



 気がつくとわたしは、見渡す限りに白くて何も無い、不思議な空間に立っていた。


――あれ、どこも痛くない。 

 もしかして…あのまま死んだってこと?


 キョロキョロと周りを見渡していた私の耳に、微かに小さな泣き声が聞こえてきた。

その声に導かれるように、声のする方へ近づいていく。


――あっ!


 そこには、声の主であろう幼い少女が、膝を抱えて泣いていた。



最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めますので、次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。

感想はいつでも大歓迎です。


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