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第二十話「農業改革-Ⅲ」

はじめまして、宵月の兎です。

この作品を読んでくださってありがとうございます。 

楽しんでいただけますと幸いです。

ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。

 小さな頃から、私は自分の中の『もう一人の自分』と孤独や痛みを分け合う事で、葛藤や絶望というマイナスの感情を消化していた。


 しかし、大人に近づいていくにつれて負の感情が一気に膨れ上がり、心に巣食う闇を少しずつ消化しきれなくなっていた。


(--その闇が、やがて漆黒の茨となっている……とか?)

 

 先程、当たり前のように魔法を駆使して畑を耕したりゴーレムを作り出したが、その際に無意識に前世と今世のイメージを脳内で混ぜ合わせ、無詠唱魔術を発動していた。


 それによって、ジアの身体と栞の魂が完全に溶け合い、ようやく馴染んだのだろう。 


 良くも悪くも前世の記憶が鮮明になって、色んなイメージが脳内を駆け巡り始めた。


(――だめだっ! 今あれこれ考えても何にもわかんないや! )


 目覚めて1日2日程度では何もわからなくて当然だと自分を納得させる。 


 何もかもが前世と違う世界なだけに、優先順位は間違えない。 今は立ち止まってはいられないから。

 

 ジアと約束したのだ。 二人で全部ひっくり返して幸せを掴むと。


何より、せっかく魔法の世界にいるんだし……楽しみたい気持ちが圧倒的に勝っている。


 今だって、頭の片隅では『育てた野菜で料理チートいけるかな?』などと、商魂たくましく今後の実現可能な計画を練る、もう一人の自分がいるのだ。


(――過去は過去! せっかくチャンスをもらったんだから、今を生きなくちゃもったいない!)


そもそも今の私は『落ち込む』なんて言葉が辞書にないくらいのハイスペ美少女なのだ。


 このステータスでまだ七歳だなんて、のびしろしかない。


 気持ちが前向きになってきた事で、体の中で不穏に渦巻いていた熱も少しずつ引いて行った。 


 ふと気配を感じて周囲を見回すと、暖かい風にのって若葉が爽やかに舞い、まるで私を優しく慰めるようにふわっと全身を撫でながら通り過ぎて行った。


 未だ地面とブツブツ会話を交わしているマリーの姿を横目でとらえて苦笑しつつ、ゴーレムと手を繋いで、私の戦闘準備は整った。


 さあ、作付け大作戦開始だ!


◇◇◇◇


 改めて目の前の畑と向き合った私は、頭の中でまとめた育成プランを実行すべく、記憶を探った。  


(――さてさて、じゃがいものコンパニオンプランツは『豆科』で良かったんだっけ? )


 『コンパニオンプランツ』とは、相性のいい作物同士を近くに植え合わせると、無農薬でも病虫害にあいにくく、美味しく良く育つようになる栽培方法である。


(――『星屑の叡智』に、コンパニオンプランツの知識あるかな?)


 その瞬間、ブワっと頭の中に知識が溢れ出した。 そのあまりの情報量の多さに、目の前がチカチカするような気がした。


(――あ、これはすごいかも……! 前世でちょっと齧っただけの知識なのに、今すぐ達人級のファーマーになれそう!)


『星屑の叡智』とは、調べたいことを脳内に思い描くだけで、最適解を導き出してくれる私だけの情報プラットフォームだ。


 最も、今世では当たり前になるが、検索する際には自分の魔力を消費しており、今みたいに調べたい事柄がざっくりしていると、メインの情報に関連した雑学をどんどん垂れ流し状態にしてしまい、あっという間に魔力が枯渇してしまう。


 要するに、私による私のための力技スキルだ。


「ゴーレム一号二号! 早速、そこのジャガイモをその山から半分くらいと、苗も篭にまとめて一緒にもってきてちょうだいな!」


 ミニチュアゴーレム達は、マリーが持ってきてくれた篭に指示通りの苗や種芋、小さいスコップやクワを持って、並んでぽてぽてと戻ってきた。 


「--ありがと! あっ、種芋は半分に切らないといけなかったわ! ナイフは厨房よね……う~ん、スコップでいけるかしら……? 」


 私は気合いの腕まくりをしてしゃがみ込み、ゴーレム達が持ってきた苗の状態を一つ一つ確かめながらあれこれ思考を巡らす。


(やばい! めちゃくちゃ楽しい~!)


 廃れた離宮の裏庭の片隅で、こっそり私の異世界スローライフ計画がスタートしたのだった


最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。

次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。

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