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第十九話「農業改革-Ⅱ」

はじめまして、宵月の兎です。

この作品を読んでくださってありがとうございます。 

楽しんでいただけますと幸いです。

ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。



 マリーは、私が自分のスキルのほんの一部をカミングアウトしただけで顔色を無くし、膝から崩れ落ちてしまった。 


私が自分で思っていた以上に、ショックが大きかったようだ。


「なんてこと……あぁ、どうしましょう……」


木の枝で土をイジイジとほじくりながらブツブツと呟き続けている。



(--こればっかりは慣れてもらうしかないよね?)

早いとこあきらめちゃいなよ! と心の中でマリーにエールを送り、

私は私で、畑と向き合う事にした。



 何しろ、私の土魔法でふっかふかに耕し、ゴーレム一号二号が畝を作ってくれた新しい畑が「早く作物を植えてくれ」と言わんばかりに存在を主張して来るのだ。



「う~ん……とりあえず、さっき手に入れた種芋やカボチャの苗を植えてみよっかな? ここにあるってことは、この国で育てられるってことだし、シチューにもグラタンにも使えるもんね!」


コテンと首を傾げながら聞いてくれるマシュマロ系ゴーレム一号二号に話しかけながら、私の食いしん防レベルはぐんぐんと上昇中を続ける。


「あとはやっぱり、フライドポテト……だよね? うあ~! めちゃくちゃ食べたい! 」


 

そのとき不意に、前世で放課後に友達と食べたファストフードやスイーツの味や香り、店内の情景やBGMの音楽が脳内でフラッシュバックした。


(――あぁ、懐かしいなぁ……)

そう思った瞬間、無情にもに理解してしまった。


……もう二度と戻れない、と。 



ギューっと押しつぶされるように痛んだ胸に手を当てて、一度目を閉じてゆっくりと震える息を吐き出してみる。


(――落ち着いて……私はもう栞じゃない、ジアなの。 )


料理のレシピやハンドメイドの知識など、感情に全く関係ない記憶は鮮明に思い出せるのに、前世の自分自身のことを思い出そうとするとうまくいかない。


実は、どんなに思い出そうとしても、あのバルコニーで目が覚める前の自分が一体何をしていたのか覚えていなかった。

 


前世の自分が見た情景や、家族や友達と過ごした日々はまだ思い出せるのに。


 でも、その記憶も今は断片的で……思い出せるのは大抵、偽りの仮面を貼りつけ馬鹿なフリをしていた大嫌いな自分の姿ばかり。


 心の孤独に疲れ果てて家に帰り、それに気づきもしない母にかけられた心無い言葉。

居場所を探して自暴自棄になりかけていた、自分の危うい一面……。


(――たぶん、心に強く残っている記憶が昏い感情を伴うものばっかりなんだろうな)


それでもゆっくりと、記憶に潜るように意識を集中させると見えてくる。


深い暗い穴の底が。 


漆黒の茨に下半身を完全に絡めとられ、逃げることは叶わない。

身体のいたるところから、黒曜石のように輝く闇の結晶が生まれている。 


それは、心の傷が増えるたびに少しずつ広がって私を蝕んでいく。

胸の真ん中を穿つ漆黒の楔と全身を覆う結晶が、徐々に私を浸食していく感覚……。


(――い、いやだっ! 怖い!)


深く思い出そうとするとその感覚が蘇り、本能的な恐怖が私を襲った。


「はあ、はあ……」

 

 この記憶を分析しようとしても、心が拒否してしまって息が出来なくなってしまう。


 恐怖で思考が止まってしまうのだ。


 自分は死んだのか、死なずに姿を消したのか――あの穴の底の人がだれなのか……?


何もわからない事が気になるが、知りたくないとも思ってしまう。 



それでも、一つだけ確かなことがある。


(――私が自分で自分を殺すことはあり得ない。 私が自分を諦めたりするはずない!)


それだけは絶対に揺るがない自分の信念だった。


(――となると、あれはもしかして……自分の中の自分? )



最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。

次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。

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