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第十五話「探検」

はじめまして、宵月の兎です。

この作品を読んでくださってありがとうございます。 

楽しんでいただけますと幸いです。

ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。


 私は、自分が幽閉されているこの塔を、なんとなく古くて狭くて暗くて、ジメジメと陰気で閉鎖的な塔をイメージしていた。


 しかし、自室を出て驚いてしまった。


 この塔は螺旋階段で下に行くにつれて広くなっていく吹き抜けの構造になっており、確かに古ぼけてはいるのだが、あちこちにタペストリーやお花がセンスよく飾られていた。 


「マリーは色彩感覚やインテリアのセンスが素晴らしいわね。 どこを見ても、とっても可愛くて素敵だわ」


「もったいないお言葉でございます」


 事実上の監禁だと分かっているのに、私のためにどんな時でもベストを尽くしてくれているマリーに感謝しっぱなしだ。


 白色の石を積み上げて造られたこの塔は、吹き抜けから陽の光が入って、明るく開放的な雰囲気だ。 各階には広い図書室や、暖かな雰囲気の談話室、前世の理科室のような器具が沢山ある研究室もあった。


 一階には、煉瓦造りの広い厨房があり、マリーが作業してくれたであろう、ハーブや保存食の干し肉が沢山ぶら下がっていた。なんとなくメルヘンで可愛いキッチンにテンションがあがる。


 マリー曰く「本邸の者は誰一人として塔内に入ってくる事はございませんので、インテリアくらい自由にさせて頂こうかと思いまして」とイタズラっぽい笑顔で言って、私にウインクしてくれる。


(--はうっ! )


 私のハートは、恋泥棒のマリーによって見事に撃ち抜かれた。


 ゆっくりと2人で塔の中を見て回っていると、窓から初夏の爽やかな風に乗って、花や木、土の香りがジアの鼻孔をくすぐった。


「マリー、そろそろ塔の外を案内していただけるかしら?」


 わざと気取った調子で言い、右手を差し出すと、マリーは一瞬驚いた様に目を見張ってから、堪え切れないと言った様子でクスッと笑い、同じく気取った調子で言ってくれた。


「エスコートの栄誉をお与え下さった美しいレディ、お手をどうぞ」


 マリーは甘く微笑みながら『ボウ・アンド・スクレープ』で私にお辞儀をし、手を取ってくれた。 麗しいマリーがやると、メイド服姿のはずなのに男装の麗人と錯覚してしまうのだから不思議だ。


「マリー反則よ! 素敵すぎるわ!」


 マリーは口元に手を添えて肩を揺すりながらくすくす笑い、思わぬ反撃にまたもや心臓を撃ち抜かれた私は、真っ赤な顔でマリーにエスコートされた。 ノリの良いマリーに首ったけな私である。




 塔の入り口には、公爵家騎士団の護衛が一人常駐している。 浮かれた様子で塔から出てきた私たちを見て、騎士は一瞬ギョッと目を見開いた。だが、すぐに厳しい表情に戻り、私に一礼してから低い声でマリーに話しかけてきた。


「あ、えっと……マリー嬢。 あまり遠くへは行かず、本邸には決して近づかぬ様に注意してください。」


 固い声音で冷たく告げた騎士だったが、私と手を繋いでいるマリーを視界に収めた瞬間、ほんの刹那だがその視線が和らいだのを私は見逃さなかった。


(――あれ? 今の視線って……?)


「心得ておりますわ。いつもお勤めご苦労様でございます、騎士様」


 マリーは優雅に微笑みながらそう返す。


 横を通り過ぎる際にチラッとコワモテ騎士を伺い見た私は、マリーの微笑みを受けた彼の口元が、一瞬緩むのを見て『おや?』っと眉を顰めた。 しかし直後に、ギロリと睨まれてビクッと肩をすくめた。


 そんな私たちの様子を見て、呆れた様な微笑みを浮かべたマリーは、私をさりげなくスカートの裾で庇うようにして隠しながら、騎士の横を軽く膝を折る挨拶をしてから通り過ぎた。 


 少し離れてから、ハァと安堵の息を吐き出してしまった私に、マリーが笑いながら「あの方は、最近護衛になったばかりのカイル様です。 鎧姿は少々ゴツくて強面ですが、案外素直で優しい方なのですよ」と教えてくれた。


(――あの新米騎士、確実にマリー狙いね! 要注意人物だわ!)


私は、コワモテ騎士に対しての警戒レベルを引き上げた。

 


「うわぁ! なんて気持ちがいいのかしら! 」


外の空気を胸いっぱいに吸い込み、黄金の瞳をキラキラさせ、いまにも走り出しそうな私の手を優しく握りながら、マリーが塔の周辺を案内してくれた。

 

 塔の裏手には『ノクターン・フォレスト』と呼ばれる深い森が広がり、可愛いらしい鳥の囀りが聞こえてくる。


 マリーは、木の実やきのこ、薬草を取りによくこの森に入るそうで、時々ではあるが野菜ばかりの食事に心を痛めるマリーを見かねて、先ほどの騎士カイルが一緒に森へ入り、ウサギやキジを狩ってくれるのだそうだ。


 先程厨房にあった干し肉も、カイルが捌き方を教えてくれたのだと、マリーが教えてくれた。


(――おっとカイル、なかなかやるじゃん!)


 ちょっぴりカイルを見直した私は、ついにあの場所に辿り着いた。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。

次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。

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