第十四話「無碍の一道」
はじめまして、宵月の兎です。
この作品を読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますと幸いです。
ゆっくり更新ですが最後まで頑張ります。
(――こんなに悲惨な過去があったのに……。 しかも私は、その不幸の元凶である公爵家の人間なのに……)
変わらず優しく微笑んでくれるマリーに、涙と鼻水といろんな感情でぐちゃぐちゃになった私は、椅子から立ち上がって思い切りマリーの胸に飛び込み、ぎゅっと顔をうずめながら言った。
「マリーっ! 本当に…本当にごめんなさい。
この公爵家が全ての元凶なのよね。 美しくて優しいマリーが、こんな生き地獄に囚われてしまったせいで、今まで何年も辛い思いをさせてしまったわ……!」
どんな言葉で、どれだけの謝罪と感謝を口にすれば、
この優しい人に私の想いが全て伝わるのだろうか--。
私は、ほんの少しでもいいから伝わって欲しいと、心の中で祈りながら言葉を紡ぐ。
「マリー、今まで本当にありがとう。
あなたの辛い過去は変えられないけれど、これからは何が何でもわたくしがマリーを守るし、絶対に幸せにして見せるわ! 」
マリーに抱きついたまま、感謝を伝え、一旦ゆっくりと離れ両手を繋いだ。
薄紫に淡いピンク色の遊色が美しいダイヤモンドパープルの瞳が嬉しそうに細められ、私を見守ってくれている。
「だから……これからも、わたくしと一緒にいてくれる? マリーがいない人生なんて、本当に考えられないの……! 」
これからは、ふたりで手を取り合って一緒に幸せをつかみ取る、必ず。
「もちろん、マリーはどこまでもお嬢様のお側についてゆきますよ。 これからも幾久しくお願いいたします、お嬢様。 」
お互いをぎゅっと抱きしめてから、二人で顔を見合わせて笑いあった。
照れくさいようなくすぐったいような、温かくて優しい空気が、私たちを包んでくれていた。
そのあと私とマリーは、本当の親子の様におしゃべりをしながら、すっかり冷めてしまったスープとパンだけの昼食を食べた。
「さっきまで、ただの味気のないスープだったのに、なぜか今は、今まで食べたどんなスープよりもおいしいわ! なぜかしら? 」と、真剣に訝しむ私を見て、マリーは思わず『――ぷっ』っと吹きだし、マナーも淑女の仮面も忘れて、声を出して笑いだした。
(――マリーには心配ばかりかけてきてしまったみたい。 いつか私が『転生者』ってバレてしまうとしても、今はもう少し、『ただのジア』としてマリーと居たい)
そもそも、マリーにとってのジアは初めから『ただのジア』という認識ではなく、自分や世界にとって、様々な意味で『特別な存在』になるだろうと確信していたのだが、このことを私が知るのはもう少し先である。
「ではお嬢様、体調もよろしいようですので、少し周辺を散歩いたしましょうか 」
マリーは笑顔で私の外出の支度を整えてくれた。 といっても、ブーツを履いて、肩に薄いショールを掛け、つばの広い帽子をかぶっただけなのだが。
「まだ体調が万全ではないかも知れません。 お手をつないでもよろしいでしょうか? 」
「マリーと手をつないでお散歩だなんてうれしいわ! では、出発よ! 」
いつもより弾んだ足取りで、私はマリーに手を引かれながら塔の中を案内してもらうため部屋を出た--
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。少しずつ物語が動き始めます。
次話もお付き合いいただけたら嬉しいです。
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