4話 修行
「真凛、今日から修行だよ」
手には何かを持っている。
白い。それが巫女見習いの服である。
「これ、着なさいよ」
美代子はそれを真凛に渡す。
その服は正服より軽かった。
「はい、おばあちゃん」
ニコっと笑う。
その姿にやつは興奮していた。
「俺の巫女よ、今日から修行だな」
「……」
やつは真顔で言っているが、巫女修行と言うのはそんな生ぬるいものでは無かった。
「お〜い、聞いているのかい?」
顔がだんだんと近づいてくるが真凛は近づくたびに後ろへと下がっていく。
「真凛とあんた、やめな」
鋭い目つきで神を見ていた。
「美代子……いたのか」
やつの動きが止まる。
何もしていませんよ〜と言いたげな顔をしていた。
「いたよ……あんた、真凛に変な修行内容をしたらただじゃ置かないからね」
また、美代子はやつを睨んでいた。
「じゃあ、俺の巫女よ、今日は俺のそばにいろ」
「はぁ?」
真凛は思わず、声を上げる。
神の言葉に美代子はますますイライラしていて、杖をカツン、カツンと叩いていた。
(警察呼ぼう)
そう、真凛は心のなかで呟いた。
彼女は貰った白い服を着てみる。
上から羽織るだけなので心配は要らない。
だからなのか、やつは少し残念そうにしていた。
「あんたね、そんなに見たいのかい」
美代子は大きなため息をつく。
その音に娘の智美はくすっと笑っていた。
「べ、別に……」
やつは顔をそらすがどこかニヤニヤしていた。
「俺の巫女よ、早速修行を始めるぞ」
そう言うとやつは真凛の横にすっと移動をする。
その時の顔と言えば、すごく気持ち悪かった。
「……」
吐息が耳をかする。
生暖かい息。
それを感じた瞬間、真凛は即座に避けた。
「なんで避けるのだ……?」
「気持ち悪いからですよ……幻覚さん」
真凛はそのまま距離を置こうとする。
やつは顔をしかめた。
「肝か?」
首を傾げながら笑っている。
肝が座るとはこの事かと思う真凛であった。
数時間後
正座で真横3人で座って並んでいた。
隣にはやつがいる。
一体何の修行なのか分からない。
真凛はただ、正座をして目をつぶっていた。
「俺の巫女、ちゃんとつぶっているかい?」
神は手を合わせている。
珍しく近寄っても来ないし、ちょっかいもかけてこない。
(どうしたんだろう?)
真凛は少し目を開ける。
横を見ると、神は美代子に首をつねられていた。
「いっっって………」
姿勢は崩していないが声は漏れている。
さっきまでの声とは違い、すごく低かった。
「……」
美代子は無言でつねっている。
そんな姿に真凛は呆れるのだった。