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3話 100歳

コツン、コツンと杖の音が聞こえてくる。

祖母…美代子だ。

「真凛……あんた、見えるのかい?」

今にも倒れそうな声を絞り出していた。

今年で100歳。

いつ倒れてもおかしく無かった。

「おばあちゃん、幻覚が……みえた」

真凛はどうにかしてと言わんばかりの表情で美代子を見た。

「あんた、ついに見えたんだね……」

美代子の顔はどこか嬉しそうであった。

百寿者は嬉しかった、何せ、娘は見えないのだから。

「真凛、明日から修行しないとね……大丈夫神様がついているから」

美代子は真凛の肩に手を置き、大丈夫、大丈夫と繰り返していた。

その様子をそいつはじっと見ている。

特に美代子を見ていた。

「……もしかして……美代子か?」

百寿者はそいつと目を合わせる。

まるでゴミを見るような目で。

「あんた……まだ生きていたのかい」

と言っていた。


「美代子よ……久しぶりだな」

真凛の時とは違い2人には距離があった。

「おばあちゃんも……見えてるの?」

首を傾げる真凛。

その様子をニヤニヤしながらそいつは見ていた。

「これ、あんた、真凛を変な目で見るのやめな」

100歳のツッコミを間近で見た真凛は少し驚いていた。

「す、すいません」

珍しくそいつが頭を下げる。

なにこれと思う真凛であった。


しばらくすると見慣れた服が目に入った。

そう、智美だ。

「二人して何話してるの?何もないところに」

彼女は淡々と言っているが、完全に見えていないわけではない。

少し感じるので大体わかっているはずだ。

「もしかして……神様?」

智美は首を傾げる。

大体、彼女は神様がそばにいるかどうか見えないが感じることだけはでていた。

「ええ……そうよ智美、あなたも見えたらよかったのに……」

ため息をつきながら美代子はそいつの方を向いていた。

「それは……」

智美の声が詰まる。

神が見えない巫女などネズミ以下なのだから仕方ないと言えば仕方ない。

後継ぎがいなかったから、でも見つかったのだ。

「智美、あんたの娘、真凛が見えたみたいだから…」

少しの間がまるで神事の時のように張り詰めていた。

「支えてあげてね、智美」

その瞬間、張り詰めていた空気がどこか和やかになった。

「はい、お母さん」

その声は聞いたこともないような低さで少し、涙がこぼれていた。

その時、やつはくすっと笑った。

「本当に作戦通りだな……美代子」

「そうだね……」

珍しく美代子がニコっと笑う。

「智美、真凛がもう少し大きくなるまで巫女を続けなさい、見えなくてもいいわ、あんたには才能があるんだから」

そう言った瞬間、智美は泣き崩れた。

「お母さん……ありがとう」

その様子を見ていたやつは

「よかった、よかった」

と言っていた。




あの後、美代子と智美は今まで以上に仲が良くなった。

これも作戦らしい。

さすが100歳には勝てないと思うのであった。

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