2話 神様がしつこい
あれから、数時間が経っただろうか…その間にも彼はしつこく真凛に話しかけていた。
「お〜い、俺だぞ、神様だぞ」
そんなことを数時間ずっと目の前で言ってくるものだから、真凛は疲れていた。
(何この幻覚)
ため息をつきながら、彼から視線をそらす。
その間にも彼…そいつは徐々に近づいてくる。
「あの〜見えてませんか〜」
そいつは真凛と目を合わせようと必死だった。
(病院行かなきゃ)
地味に時間かかるんだよね…真凛はそう思いながらそいつとは目を合わせないように必死で、結局、智美の舞をずっと見ていた。
「おい、本当に見えていないのか」
そいつの手が真凛の顔に少し触れる。
その反動で真凛は体を反った。
(やばいやばい)
本当に救急で病院に行かなくてはと思う真凛であった。
「触れたからには契約成立だよ」
そいつは真顔で言ってくる。
しかも今はまだ神事の途中だと言うのに。
「………」
見えてはいけない物が見えているはずなのに真凛は平然としていた。
「聞いているのかい?」
「見えているのをわかっているんだぞ……」
また、そいつは真顔で真凛に声をかけていた。
彼女は一瞬そいつをみたが気にもとめずにもう、そろそろ終わるであろう神事を見ていた。
「お〜い、神事より俺を見ろよ」
気づけばそいつと、真凛の距離は10センチぐらいであった。
(救急車呼ばないと、いやおばあちゃんかな…)
そう、心のなかでぶつぶつとつぶやく真凛であった。
そんな事を考えていると、あっという間に神事が終わっていた。
「お〜い、終わりましたよ、俺の巫女〜」
そいつは段々と近づいてきて、最終的には3センチの距離だった。
「なんですか…?」
真凛は彼の方を少し見て、こりゃあヤバいと改めて思う真凛だった。
「やっとか…俺の巫女よ」
距離は2センチとなり、めちゃくちゃ近くなるのであった。
「あの…契約ってなんです?」
真凛がつぶやく。
するとそいつはやったぜという顔をして、距離は1センチになった。
「契約というのはな、俺の魂を宿る体になるってことだ」
彼はそんなヤバいことを真顔で言ってくる。
真凛は霊媒師でも呼ぼうかと思うのであった。
「なんですか!それは」
少しでも、動けばお互いの唇が触れる距離。
真凛は後ろに下がるのであった。
「何、普通のことさ」
彼女が後ろに下がったことで距離は10センチほどに戻ったが、それでも顔面が整いすぎていて、顔が近く感じるのだった。
「もう…」
真凛はため息をつく。
一生こいつと生きていくのかと思うだけで虫唾が走った。
「今日からよろしくな」
ニッコリと笑った顔はまるで悪魔のような笑顔だった。
「…………」
真凛は頷きもしない。
彼女はまだ幻覚だと思っていた。
「君の名前は?」
そいつはまだ笑顔だった。
「……真凛ですが、何か?幻覚さん。」
真凛はついに幻覚と目を合わした。
その時の神様と言ったら五歳児のように飛び跳ねていたのであった。
「俺の巫女よ、名は彰仁だ、よろしくな」
「……」
神の声だけが響き渡るが、もちろん真凛以外には見えていないし聞こえてもいない。
ある1人を除いては。