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魔法少女

 私が生まれ変わってから一年が経った。どうやらこの国は私のもともといた国とは違うらしい。これを転生というのだろうか?

 まあ、今はそんなことはどうでもいい!

 

「ママ、もういっこ!」


 目の前のクッキーを平らげる方が優先である。

 というわけで私はクッキーを両手に2枚、口に挟んでいる1枚、口の中にあるもう1枚の合計4枚持っているわけなんだが……ふと気づいてしまった!?

 

「ママ、わたし、クッキー初めて食べたっ!」

「実はねミコト、私も初めてなの」

「ママも初めて?」

「お兄ちゃんがね、ミコトのためにって作ってくれたんだよ〜 ねえ、ヨシツネ?」

「……ちょっと作り方の本があったから試してみたかっただけだし。別にミコトのためじゃないし」

 

 ——おわかりいただけただろうか?

 

 何を隠そう私のお兄ちゃんはツンデレなのである。

 いや、やっぱり違うか?

 

「にいにありがと!」

「…………」

 

 お兄ちゃん、顔が赤いぞ?

 へへへ、やっぱりツンデレだなあ。そうなんだなあ?

 

「でもねヨシツネ、何かするときは私に一言相談しなさい? 料理だって火とか使うし危ないのよ」

「…………知ってるよ」

「だよね。だって私のヨシツネは賢いから!」


 言いながらお兄ちゃんに抱きつくママ。

 そんな平和な光景にわたしは思わずクッキーを頬張るのだった。


 ってもう残り5枚しかないじゃないか!?

 

「にいに!」

「ど、どうしたのミコト?」

「あのね」

「……うん」

「————おかわりいただけるだろうか?」

「………………………………ミコト、食いしん坊。食べすぎると将来太るよ?」

 

 うぐっ!

 

「もうにいになんて嫌い!」

「なっ、なんで!? わかったよ、また作ってあげるから〜」

 

 って、何してるんだ私!

 

 ……どうやら私は心まで幼児に戻ってしまったようです。


 

 

 それはある夜のことだった。

 私はママと一緒に布団という薄いベッドの上で寝ていた。そんな時、天井から——コロンコロン——という音が聞こえてきたのだ。

 

「ママ、今の音、雨かな?」

「うん? アメってなあに?」


 ママは雨を知らない?

 もしかしてこの国では違う言い方をするのだろうか?

 と思っていたら近くで寝ていたお兄ちゃんが教えてくれた。

 

「雨っていうのは水がなんかいっぱい落ちてくることだって——そう本に書いてあった」

「へえ、そうなんだ。さすがヨシツネは物知りだね」

「けどミコトはどこで雨なんて聞いたんだ?」

 

 ——うっ、どうしよう。ピンチだ!

 もしかしたらこのまま私が転生したってバレちゃうんじゃ……

 

 あ、でもよくよく考えたらなんでバレちゃいけないんだろう?

 前世の記憶があるってだけだし。

 そりゃあ隠せるなら隠しておいた方がいいとは思うけど……

 そもそも本当に転生してるのかな、私。

 

「ミコトはヨシツネに似て頭がいいから、きっと本を読んで覚えたのよ。だってまだ一歳なのにこうしてちゃんと話せてるし」

「……ミコト、本読めるの?」

 

 お兄ちゃんは訝しむような目で私を見る。

 

「うん、読めるようになったよ」

「じゃあさこれ読める?」

 

 そう言ってお兄ちゃんは本を持ってきてその中の1ページを私に見せた。私はそれを読む。

 

「えっとね——

 ウチュウ、ハ、チヂム。

 チ、ト、ミズ、モ、ナク。

 ヨル、ト、ヒル、モ、ナク。

 ヒカリ、モ、ナク。

 スベテ、ガ、マザル。

 ソレヲ、ヒト、ハ——」

 

「すごい、読めてる。読めてるよ!」

 

 私が読み終わると、お兄ちゃんはガラにもなくはしゃいでいた。

 

「でも私これの意味ちっともわからないよ?」

「ははは……それは僕も同じだよ。チってなんだがわからないし、ヨルとかヒルだって何かわからない。

 けどね、だから僕は本を読んでるんだ。

 本の中に出てくるたくさんの分からない。

 そんな〝分からない〟が〝分かる〟ようになる瞬間がすごく嬉しいんだよ」

「にいに、すごい!」

「すごくないよ。身体が弱いせいであんまり母さんの役にたててないし」

「そんな事ないよ、にいにすごいよ!」

 

 お兄ちゃんはどうも自己評価がすごく低いらしい。正直、私の前世なんか文字すら読めなかった。それに比べたらお兄ちゃんはすごい。

 

「そうよヨシツネ。あなたの知識に助けられたことだってたくさんあるじゃない。この間だってクッキー作ってくれたでしょ。

 きっとヨシツネがいなければ私もミコトもあんな美味しいもの一生食べられなかったはずよ」

「どうだろう……

 けど、少しでも役に立ててるなら嬉しい……かな?」

 

 くぅ、やっぱりウチのお兄ちゃんはツンデレだ。

 

 って…………ん?

 

 なんで私、文字読めるようになってるんだろ?

 

 というかさっきの音は?

 

 その時だった。

 世界が停止したのは。




「やあ、久しぶりだね世界最弱のミコト」


 そこにはハシビロコウのネッシーがいた。


「——私と契約しよう」

 

「契約? この前したはずだだよ?」

「魔法少女になるんだ」

「まほーしょーじょ?」

「世界最弱の君でも、アレに勝てるようになる力だ」

「アレ?」


 言われた瞬間気づく。私の隣にいるママとお兄ちゃんの姿が、布団の上にない。

 私はネッシーの長い翼の先へ、視線を走らせる。

 

「助けたいだろ?」


 翼の先——そこにはママを抱えた、おぞましい怪物の姿があった。

 

「なに……アレ……」

「アレだなんてひどいじゃないかミコト。彼は君のお兄ちゃんだよ?」

「にいにはあんな怖くない!」

 

 私がそういうと、ネッシーは器用にさっき私が読んだ本をくちばしで取った。


「ここ、読んでみなよ」


 言われて通りに私は読む。

 

「スベテ、ガ、マザル。

 ソレヲ、ヒト、ハ——


 ————カオスと呼ぶ」

 

「そう、カオスだよ。

 物事の境界はぼやけ、曖昧になり、やがて消える。そこに絶対の普遍などありはしない」

 

「…………難しい!」

「マジかっ!

 ……つまりだなあ、あべこべな世界ってことだよ。

 この世界では君のお兄ちゃんの優しさも、時として憎悪に変わる。どんなに良い人だってバケモノになる世界なんだ。

 そんなこのアベコベ世界で君のお兄ちゃんを救えるのは魔法少女だけ」

「…………魔法少女?」

「そう。だから改めて聞くよ」

 

 そうしてネッシーは告げる。

 

「私と契約して魔法少女にならないかい?」

ブックマークさっそくしていただいて感激です。

どのたかシステム上わかりませんが、ブックマークしてくれた方にめちゃくちゃ全力の最大限の感謝をはああああああーーーー!!(ギュイイイイイイイイイイイン!)

改めて本当にありがとうございます!


改めて、ぜひ評価ブックマークなどしていただけると投稿早くなると思います。作者はそういう人間ですので、よろしくお願いします!

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