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彼女がいる俺の机の中に告白を告げる手紙が入っていて困った

作者: 有原優

 今日の朝、机の中を見たら手紙が入っていた。

 中身を見ると、どうやら放課後に校舎裏に来て欲しいとのことらしい。


 このパターンは告白しかない、そう確信した。

 だがそうなると問題がある、俺はこの告白を断らなければならないのだ。


 実のところ俺には彼女がいる、あまり知られていないことではあるが、学外に可愛い彼女がいるのだ。

 それを知っているのは学校には親友の遠山恒星(とおやまこうせい)だけである。


 さてどう断るものか。

 もし仮に告白を断るのに失敗してしまったら、どんな事を女子たちに言われることか。

 罵倒されるかもしれない。そう思ったら憂鬱だ。


 実際に隣のクラスの長谷部君が、そんな事を言われてしまっている。

 その子の友達から、なんで断ったの?

 可哀そうだよ。なんて言われ、いじめを受けているという話を人伝で、効いているのだ。


「なあ、恒星? こんな手紙が机に入ってたんだけど」


 とりあえず友達に相談することにした。


「ん?こんな手紙告白しかねえだろ、まさか浮気すんのか?」

「そんな訳ないだろ、俺があいつに殺されるわ」


 浮気なんてしたら、もう、折檻されるだろう。

 この世の地獄を全部集めたくらいの地獄に送られるだろう。


「で、どうすんだ?」

「それをお前に聞きたい」

「そんなん断るしかねえだろ、てかそれ以外方法あんのか?」

「いや、女子って怖いんだよ。断ったら裏で悪口言われるかもしれないし、どうやって断ろうかと」

「じゃあ、今の彼女を振ればいいじゃん」

「冗談でも許さねえぞ、それは」


 俺は彼女を愛しているんだ。


「冗談だって」

「いや、冗談でも許さねえと言ったやんけ」


 俺の彼女栗山優奈(くりやまゆな)はとてもかわいい。

 そんな彼女を振るなどできるわけがない。

 怒られるとか関係なく、俺が彼女と付き合っていたいと思うからだ。



「ごめんって」

「ごめんで済んだら警察いらんわ」

「で、どうするんだ、素直に言えば認められるだろ」

「いや、そうとも限らないって、2組の長谷部くんが、振ったことが原因で女子にいじめられてるのは有名な話だろ」

「そりゃそうだが」

「だからとりあえず怖い」


 本当に俺は影口を言われるかもという状況は嫌だ、学校生活は安心して暮らしたいのだ


「だったらどうしようもないな、それはお前の問題だ」

「ひどくない?」

「仕方ないだろ、俺にはどうしようもできねえ」

「そうか、お前に頼んだのが間違いだった」

「そっちこそひどいだろ、これは誰にもどうにもできねえだろ」

「いやそう言われても、俺はお前を信じて聞いたわけで、それでお前が思ったより使えなかっただけだろ」


 本当にこいつは賢い。実際に勉強は俺よりもできる。

 だから俺はこいつが起死回生の案を出してくれると期待していた。


「聞いといてなんだよそれは」

「てが本当にどうしよう」

「それはその時に考えろ」


 そしてそのまま時間は無慈悲にもすぎていく、一瞬逃げようとも考えたが、それはただの逃避である。

 どうしようどうしようどうしようと授業中にずっと考えている。


「おい、皆川、おい皆川」


 どうしよう、本当にいいアイデアが思いつかない


「おい皆川聞いているのか」

「は、はい」

「教科書の下から3行目を読んで」

「はい」


 考えすぎで怒られてしまった。


「おいおい、優希、何やってんだよ」

「考えごとしてたんだよ」

「手紙のことか?」

「当たり前だろ」


 そして、いいアイデアが来ないまま、勝負の時が来た。

 そう、放課後である。


 俺は今日告白を断らなくてはならない、勇気を出してしたのであろう告白をだ。

 断ったら、憎まれるかもしれない。悲しまれるかもしれない。ただ、俺は断らなくてはならないのだ。


「あのー優希さんですよね」

「はい」


 俺は心なしか緊張してきた、俺は彼女を悲しみの淵に落とさなければならないのだ、このまま時間が止まって仕舞えばいいとさえ思ってしまう。


「私は町田咲奈(まちださな)と言って、1年です。そして率直に言います、付き合ってください!」


 彼女は力強くそう発言した、俺はああ来たなと感じた。

 そして俺は考えても仕方ないと考え、勢いで言った。


「ごめんなさい」


 俺は勢いそのまま断った。


「え?」


 彼女は困惑している、当たり前だ、告白を断られたのだから。

 今にも泣きそうな顔をしている。俺はその顔を見て申し訳ないなと感じた。

 しかし俺にはどうしようもないのだ。


「どうしてですか?」

「ごめん俺には彼女があるんだ」

「そうですか」


 彼女はその場で沈黙している、涙を堪えているように見える。俺は無力である、その姿を見ていることしかできないのだから。


「チャンスをくれませんか?」

「え?」


 まさかの答えだった。

 俺に彼女がいると伝えたのにまさか食い下がってくるとは思っていなかったからだ


「私とお試しに付き合ってください」

「いや、俺彼女いるよ」


 どういうことだ?と優希は思った、優希は確かに彼女がいると言ったはずである。

 ということはこれは話を聞いていなかったのか、それとも浮気をしてくださいということなのか


「それは分かってます、でも私は諦めきれません、浮気をしてください」


 後者だった。

 堂々として言われた。


 これは本当に困った。

 どんな罵倒でも受ける覚悟をしていたが。

 まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかった


「ごめんな」


 俺はそういうしかなかった、浮気なんてできる訳がない。

 俺は後ろを振かえずに、その場から走り去った


 しかし、誤算だった。恨むとかじゃなく、諦めないとは。

 確かに、彼女の、町田さんの視点から考えたらそりゃ当たり前のことだ。

 彼女がいるからという理由だけで、好きな人を諦めなければならない。

 そんなの嫌だろう。

 どちらが先に好きになったかの違いでしかないのだ。



 そして俺は彼女と待ち合わせをして一緒に帰る。

 自慢の彼女である優奈とだ。


「優希君!だーれだ」

「馬鹿なことはやめろ優奈」


 俺は目隠しをしてくる優奈を軽くバシッと叩く。


「えへへ、優希の声が聞けて嬉しいな」

「嬉しいって、毎日会ってるし、聴いてるだろ」

「そうだけど、嬉しくなっても良いじゃない」

「まあそうだな」


 そして俺たちは手をつないだ。そして、家に向かって歩き出す。

 俺たちの家はすぐ隣り同士なのだ。


「先輩!一緒に帰りましょ!」


 その時、後ろから声が聞こえた。


 俺は驚いた、あの子が、町田さんが来たのだ。やはり、まだ諦めていなかったらしい。

 しかし、優奈がいるときに突撃するのはやめてほしい。

 あらぬ誤解を招くから。


「優希、誰その子、まさか浮気とか?」

「いや、今日告白されて」

「ちゃんと断ったんでしょうね」

「もちろんだよ、彼女がいるからって言って」

「じゃあなんでここにいるの?」

「知らないって」


 俺が訊きたいところだ。


「私が先輩のこと諦めきれなくて、ここに来たんです。だから先輩は何も悪くありません」

「ならよかった、もし優希が連れて来たとしたら殴ってたところだったから」

「俺、あと少しで冤罪で殴られてたってこと」

「当たり前じゃない、疑わしきは罰せよだよ」


 相変わらず無茶苦茶である。


「先輩?なんでその人のことが好きなんですか?」

「そりゃずっと一緒にいるし、可愛いし、暴力的だけど、こう見えても性格可愛いんだ」

「こう見えてもとか、暴力的とか二言余計よ」


 怒られた。

 こう見えても褒めてるんだがな。


「あの先輩?私があなたの彼女よりも魅力的になったら付き合ってくれますか?」

「あの、少し良いかしら」


 優奈が咲奈に食い掛った


「あの、私は先輩に聞いているんです」

「それはわかってるわよ、けれど、あなたは今自分がやってることの意味を知らないかもしれないから」

「意味は分かってます、私はいまあなたから先輩を奪おうとしていることは」

「それを分かってるならなぜ、そんなことをしようとしてるの?それは酷い行為だよ」

「そんなの関係ありません!もし人の彼氏を取ったら行けないんだったら、早い物勝ちになってしまうじゃないですか」

「少し待てよ、俺は優奈が好きだ、この気持ちだけは変わらない、諦めてくれ」


 諦めてくれるまで、何度でもいうしかない。アタックしても無駄だという事を。


「優希君、ありがとう」

「わかりました、今日は諦めます。でも私絶対諦めませんから」


 そう言って去って行った。

 明日もアタックしてくるのか。

 実に面倒くさい。


「やれやれ、ごめんな、俺がモテるが故に」

「本当よ、優希は困るなー」

「すまんな」

「これからどうしたら良いと思う?」

「ストーカーで警察に突き出したら?」

「まだストーカーぐらいのことしてないだろ」

「でも付き合っている人に浮気を頼んだら、それはストーカー予備軍じゃない?」

「いやいや、違うから」


 とはいえ、危なげなところはあるけどな。

 じっとこちらを見てるし。


「なんでその子を庇うの?」

「庇ってないって、優奈が過激派なだけだろ」

「それぐらい普通じゃない?」

「普通じゃないって、全く」

「ところで、今日家行っても良い?」

「なんで?急だな」

「いや、ここで本職彼女がアタックしないと」


 あれ、まさか立場が危ういとでも思ってらっしゃる?


「大丈夫だよ。お前以外になびくことなんて無いから」

「ありがと。でも、行かせてもらうね」



 そして十分後、家に着き、そのまま中に入っていく。


「こんにちは」

「あ、優奈ちゃんいらっしゃい」


 そうお母さんが言う。


「お邪魔します」


 そう、優奈が言って、俺たちは上ニアがtぅて行く。


「で、どうする?あの子」

「ああ、その話か」


 町田さんの話だろう。


「うん、うざいよね。殺す?」

「おいおい、さすがに冗談でしょ」


 殺すなんて言う言葉を美少女は使ってはいけない、と思う。


「当たり前でしょ」



 良かった。冗談だった。



「まあそれは置いといて、彼女めんどくさいね」

「ああ、まさか引き下がらないとは」


 俺と優奈のラブラブを見せたというのに。


「優希まさか浮気しないでよ、私それが心配」

「俺を信用してないだろ」


 俺は浮気しようなんて一瞬たりとも思わなかったのに。


「でも、付き合った当初は、俺からしたらお前のほうが心配だったよ」

「そうなの?私もしかして信用されてない?」

「そうじゃなくて、お前モテるじゃないか」


 俺には見合わないくらい高値の女だ。


「私の学校女子高だよ、出会いすらないよ」

「そうなんだがな、お前、前ナンパされかけてただろ」


 帰り道、俺が待ち合わせ場所に行くと、チャラ男に声をかけられているのを目撃したことがあるのだ。


「あーあれね、私絶対浮気なんてしないから、心配しないでよ。断ったし」

「だったら俺も信用しろよ」

「そうね、なんとなく信用できない」

「ひどいな」


 俺は信用してるっていうのによ。


「ところで何か遊びましょうよ」

「対策を考えるんじゃなかったのか」


 急だ。


「そうだけど、私への好感度を上げといたほうがいいかなって」

「何?その理論」

「まあ、とりあえずそういうことよ、あなたが浮気しないように私だけを見させるの」

「なんか急に怖くなってねえか」

「まあ、とりあえずやろーよ」

「あ、ああ」



「で、何をやる?」

「カートレースゲームとか?」

「いやよ、協力できないじゃない」

「協力しなきゃなんねえのか?」

「当たり前じゃない、二人の愛の力を見せましょうよ」

「なんか今日のお前うざくない?」

「ふつうだよ」

「そ、そうか」

「で、何をやります?」

「じゃあ、とはいえ難しいな、協力するゲームか」

「あれじゃない?レールトバトルは?」

「ああ、あれがあるな」


 レールトバトルとはいわゆる戦争ゲームである。剣で敵を切りまくって敵の本陣に行き旗を奪ってその旗を自陣の旗のところに掲げたら勝ちという単純なゲームである。


「さて、優奈は後衛をやってくれ」


 後衛とはつまり、旗を守る役目というわけである。


「えー、二人で攻めようよ。他のみんなも攻めまくってるよ」

「今の時代みんな後衛やらないのか……」

「みんな作戦がわかってないねー」

「ん、ちょっと待て。敵が攻めてきてないか?」

「よーし、二人の共同戦線だね。頑張ろう」

「おう、じゃあ俺が一直線に攻めていくから、ゆなは回り込んで向こうから攻めてくれ」

「わかった」


「うおおおおおお」

「ゲームで叫ばなくていいから」

「こういうのは気分が大事なんだよ」


 敵のキャラが銃を発射してくる。ちなみにだが俺は近接攻撃が得意なソードを使っている。


 敵が発した銃を障害物で遮りながら、距離を詰められないように上手く立ち回る。こういうのは、距離を取って距離によるアドを取りたいと思うものだ、現に敵もこっちに向かってこない。だから俺も距離をとりながらよける。普通の状況だったら俺が圧倒的に不利だろう。だが、今回は違う。向こうから助けが来ることがわかっているのだ。だから向こうの注意を引き続けて、俺はやられないように立ち向かう。


「はあ!」


 そう言ってユナが向こうから銃で敵を撃つ。だが、致命傷には至らなかったらしく、銃で反撃してくる。 


「俺を忘れるなよ」


 そう言って、敵に切り掛かる。ユナの方を向いていた敵は反応が遅れて俺の剣に斬り伏せられた。


「やった!」


 そう言ってハイタッチする!


「旗が取られました」

「しまった」


 こっちが一方の敵を挟み撃ちにしている間に、別の敵が旗を取ったらしい。こうなったらピンチだ。相手が獲得した旗を自陣に持ち帰る前に殺らなければならない。


「優奈、向こうから回れ」

「うん」


 そう言って俺たちは別れる。テレビゲームだから互いの画面が見えるのだ。俺たちは2画面を見て、どこから攻めたらいいのかを考えて動く。しかし、時間が無い。相手の方は自陣に近くなればなるほど有利になるのだ。


「はあ!」


 ユナが敵に向かって銃を放つ。どうやら敵の位置が把握できたらしい。運のいいことに敵はまだ味方と合流できてないらしい。俺はユナの方に走っていく。つまり敵がいる方向だ。


 いた、旗がある! 余談だが旗を持っている敵は攻撃手段がないのだ。旗を持っているだけで精一杯だからだ。


 俺たちの挟み撃ちによって敵は逃げ場がなくなった。こうなったら心配しなければならないのは敵の援軍だけだ。援軍さえ防げばなんとかなる。俺は背後を警戒しながら切り掛かる。


 画面にはprotect という文字が出た。しかし、これで終わりでは無い。旗はやられてからも十秒残るのだ。俺たちは互いに背中合わせに立ち、警戒を続ける。一度敵が向かおうとしてきたが、さすがに2体一は不利と見たのか、逃げていった。そんなことをしてるうちにすぐに旗は消滅した。俺たちは防げたのだ。


「いえーい!」


 俺たちは再びハイタッチする。


「さてと、今度は旗を狙うか」

「うん!」


 そして俺たちは敵陣へと向かう。敵陣の方が守備が厚い。しかし、敵が混乱していたらそれは違う話になる。相手側は旗を守ろうと走り出していた、そのため敵陣はガラガラだった。そうなったら旗を取るのは簡単だ。


「どっちが取る?」

「俺が取るよ。優奈は守備をお願い」

「わかった!」


 そして俺が旗をとり、警戒しながら自陣に向かう。ピンチの後はチャンスとはよく言ったものだ。敵はうまくまとまりがなく、一人ずつ向かってくる。しかし、ユナがそれを蹴散らしてくれた、そんなことをしている間に別の味方が合流してきた。これで三人だ、そう簡単にはやられない。



「着いたんじゃない?」


 ユナがそういう。そして自陣の旗の部分が見えた。俺はそっとおく。そしてポイントが追加された。


「いえーい」


 ただ、今度はハイタッチをしない。敵が向かってきているのだ。この厚い守備を突破するのかと思ったが、ちゃんと向こうも学んできたらしく、ちゃんと三人かがりで攻撃してきた。こうなっては作戦を立てようにもうまくいかない。俺とユナは二人で固まって行動した。しかし、それがダメだった。敵はランチャー使いだった。ランチャーはためが長いがその分範囲がでかい。固まっていた俺たちはひとたまりもなかった。


「くそー」


 俺は悔しがる。


「ドンマイ、今は旗を守ることを考えないと!」


 ユナは冷静だった。そして十秒のクールタイムが終わり、俺たちは駆け出して行った。


「優奈、左に行ってくれ」

「うん!」

「俺が突っ込むから、援護射撃頼む!」

「ランチャーには気をつけてね」

「そりゃあ、俺のセリフだよ」


 そして俺はランチャーを倒そうと試みるが、守られてて突破は難しかった。なので俺は裏から回って、ランチャーを倒そうとする。こいつが相手の核だと思うのだ。


「優希、そっちに行くの?」

「ああ、あのランチャーは生かしてはいけない」

「分かった」


 相手の接近キャラは上手く俺を攻めながら、ランチャーを守ってくる。だが俺は、避けまくる。俺の目的はこいつらを倒すことではない、ランチャーを倒すことだ。俺は高台の上にいるランチャーに一撃かます。そしてランチャーは倒れた。

 その代わりに上に向かってきた敵にやられたが、それはいい。俺は十秒待ちながら、ユナの画面をじっと見る。復帰した後にどう立ち回るかを見るためだ。


「優奈、どうして欲しい?」


 俺は聞く。


「やられそうだから助けて欲しい」


 優奈からそう返ってきた。俺はすぐさま優奈のところに戻る。


「はあ!」


 俺は優奈にトドメを出そうとしてた敵を倒す。これで向かってきてた敵は全滅できたようだ。


「ハイタッチ!」


 俺たちはハイタッチした。


「さて今度はまた攻める番か?」

「でももうあと一分半だから守った方がいいんじゃない?」

「いや、もうこの状況になったら敵はアホになって攻めまくる。そこが好機なんじゃないか?」

「確かに」

「じゃあ攻めるぞ」


 そして敵陣に向かう。


 俺の読み通り敵はあんまりいなく、待ち伏せしてた一人を挟み撃ちして敵を倒した。しかし


「ちょっと嘘でしょ! 逃げ道封鎖されてるんだけど」


 そうかと俺は気づいた。たおされた敵が戻ってきて、上手く封鎖しているのだ。これでは自陣に戻れない。


「慌てるな優奈、敵がここにいるってことは攻められないってことだろ」

「そ、そうだね」

「だから、時間を稼ごう。そしたら奴らは焦って、こっちに攻めてくるだろ」

「うん、さすが優希!」

「えっえん」


 俺は胸を張る。


「さてと、あっちが攻めてくるのを待つか……」

「うん!」


 そして10秒も経たないうちに奴が来た。


「よし、迎え討つぞ!」


 そして俺たちは敵と戦いを繰り広げる。


「負けたねー」

「おう」



 残念ながら勝負に負けた。しかし、それなりに時間を稼げただろう。それに俺たちはやられたせい……おかげで自陣の守りに入れる。


「守るぞー! 優希頼んだよ!」

「おう!」


 残り時間はもう三十秒しか無い。もう相手には余裕がないはずだ。


「やった!!!」

「おう!」


 三十秒守り切った。俺たちの勝ちだ。



「やったー」


 優奈が喜んだ。それを見て俺も良かったなと思う。


「これで私たちラブラブだね」

「そういう事でもない気がするが」

「いいじゃん。私たちラブラブなんだから」

「そうかもな」


 こいつは好きだが、こういう性格が困る。まるでメンヘラのような性格が。


「じゃあ、今日は止まっていい?」

「それはだめだ」

「え?」

「お前どうせあの子に感化されてるんだろ。大丈夫だよ。俺は浮気なんてしないからさ」

「本当?」

「当たり前だろ」


 そもそも浮気したらどうなるかわからないしな。


「だから今日は帰ろ。もう夜遅いしな」

「うん! またメールするね」

「ああ」


 そしてその日はお開きとなった。




「優希さん! 一緒に登校しましょう!!」


 翌日。早速町田さんが家に来た。やはり諦めてはいなかったか。

 俺的には断りたいところだが、家まで来てもらって断るのは悪いという感情がそれを妨げる。

 ちなみに優奈の学校とは始業時間が違うので、朝は一緒には登校しない。


 悪いという感情はあるが、俺には優奈がいる。


「すまん。俺は君とはいっしょに行けない」

「じゃあ私の何が悪いんですか? ただ、告白するのが遅かっただけじゃないですか」


 いや、それが原因だと思う。だが、


「確かにお前が先に告白してたら、違っていたのかもしれない。確かに君はかわいいし。だが、俺には優奈が大切だ。だから何回言っても無駄だ」

「そうなんですね……でも、私ついてきますから」

「それ、世間一般で言うストーカーだぞ」

「いいんです。訴えられても。私にはもう皆川先輩しかないんです」

「お例外を狙えよ……つーか時間ねえからまたな」

「え? ちょっと?」


 もう八時十分なのだ。流石にもう行かなくては。という訳で彼女を置いて歩き出した。しかし、


(つけられてるな)


 完全にストーカーされてる。完全に一〇メートル後ろから尾行されてる。これじゃあなんぁ嫌だな。気まずすぎる。

 本当つけるならもう少しちゃんとやってほしいな。気配でバレバレなんだよ。


「はあ、もう。つけてくるな」

「……」


 気づかないふりをする気か。

 とはいえ、昨日の問答からして、俺が浮気したとは思われないだろうが。


「私は、諦めてませんし」

「諦めろ。俺と優奈は昨日家デートしたんだぞ」

「家デート……なんて羨ましい。私ともしてください!!」

「そう言う話ではないんだよ」


 要求されても無理なものは無理だ。俺に愛しい彼女がいる時点で、うk¥沸きなんてできるわけがない。そもそも浮気するメリット自体がない。背信行為だし。


「という訳だ、諦めてくれ」

「諦めませんよ!! 要するにばれなかったらいいんでしょ? だったら学校で私と過ごしたらいいじゃないですか! 私休み時間ごとに教室に来ますよ?」

「そうじゃねえ。俺は浮気ばれのリスクとか関係なしに俺は純愛で痛いんだよ」

「あ、学校見えましたね」

「あ」


 しまった。一緒に登校してしまった。彼女は「楽しかったですよ」と言って学校に行ってしまった。


「俺の負けか……」


 早いうちに何とかしないとな。そう思った。


「おはよう恒星」

「おはようって、なんか疲れてないか?」

「ああ、ストーカー女に疲れた」

「ストーカー女?」

「ああ、手紙の差し出し主。断ったのに、諦めてくんねえんだよ。俺は優奈一筋なのに」

「それは大変だな。俺もモテ男じゃなくてよかったわ」

「お前は彼女の一人でも作れ。てか、もうあのストーカー女に告れ」

「俺に擦り付けようとしてないか!?」

「ああ、地雷女を引き受けてくれ」


 そして俺たちが話しているうちにホームルームになった。


 そしてホームルームが終わり、先生が教室から出ていくと。


「先輩ー!!!」


 彼女が教室に入ってきた。


「よし、告白しろ」


 俺はそのタイミングで恒星に言った。


「なんでだよ。ほら行ってこい」


 と、恒星におされ、彼女の前に来る。


「来るなよ」


 と言ってため息つく。迷惑してることを出来るだけ態度で示さなければ。


「私は何があっても来ますからね」

「普通にお前が怖いんだが」

「怖いって、私は恋する乙女ですよ?」

「俺の知る限りそんな恋する乙女はおらん。つーか、別の男を推薦するわ。こいつ、恒星って言うんだけど、いい男だぞ。結構顔もいいし」

「私は先輩以外いりません」

「……」


 その裏で、「俺ナチュラルに振られた!?」などと、恒星が言ってるが、それを無視して、


「俺的に恒星は結構いい男だと思うんだけどなあ、今後悔しても知らないぞ」

「大丈夫です。私絶対後悔しないので」


 裏で構成が悲しそうな顔している。恒星普通にかわいそう過ぎる。まあ、半分俺のせいでもあるんだけど。


「まあ、でも。相手は恋が成就しそうなやつを選びといいぞ。じゃな」

「私はそんなもの鯉と呼ばない気がします。高嶺の花を狙うのこそ鯉だと思います。絶対にあなたの心をわたしの者にして見せますからね。皆川先輩」


 そう言って、彼女は去って行った。今の時間は49分。果たして彼女は間に合ったのだろうか。


 そして、次の授業が始まり、終わりを告げた後、


「俺、告ってないのに、振られたんだけど。お前のせいで!!」


 そう、恒星に怒られた。


「許してくれよ。俺だって、お前を悲しませるつもりはなかったよ」

「絶対、擦り付けるためだろ」

「……誰を擦り付けるためですか?」


 恒星が慌てて後ろを振り返る。するとそこには彼女がいた。


「なんで、私の愛が伝わらないんですか? 私は、皆川先輩のことだけが好きなのに」

「っちょっと怖いから落ち着こうか」


 なんだか、殺されそうな感じがする。こういうのを病んでいるというのだろうか。


「落ち着きません!!」


 と、背後から無理やりハグされた。


「ちょっおい!!!!!」

「話しません。学校にいるときの皆川先輩は私の者です」

「おーい。怖すぎるんだが。だれか助けてくれ!!!」


 そうは言うものの、周りのクラスメイトはこちらを見るも、助けてはくれない。面倒ごとに巻き込まれたくないからなのだろうか。


「おい! 恒星も!!」

「俺は見てると楽しいから放置」

「裏切ったな」

「大丈夫です、私は味方ですから」

「俺にとってはお前が敵なんだよ」


「だから離れてくれ!!!」と、キレながら言ったらついに話してくれた。ついに俺の祈りが通じたかと思ったら、「授業なので帰りますね」と言われた。ただ、時間やばかったから離しただけだろ。くそ、これいじめとして先生に訴えること出来ないか? 普通に毎回来るのしんどいんだけど。


「なあ、もう早退してもいいかな。疲れたんだけど。授業で寝たら、先生に説明してくれよな」

「ああ、分かった」


 そして案の定授業中に寝た。そして次の時間もうしんどい俺は、ついにトイレに駆け込んだ。トイレでスマホをいじる。ついでに、優奈とメッセージのやり取りをする。これが今の俺に撮れる最善の手だ。てか、もうトイレを家にしたい。もう、あいつのストーカーに巻き込まれたくない。


『なあ、優奈』

『何?』


 2秒後に返事が返ってきた。早すぎだろ。


『今さあ、あいつにつきま取られてて普通にウザイ』

『まさか、浮気してないよね』

『まさか、もう5回くらい振ったのに、まだ来るんだよ。何とかしてくれねえか?』

『確かにそれは深刻な問題ね。私たちの仲を引き裂こうなんて許せないわ、あの泥棒猫。いいわ。私が何とかしてあげる』

『ありがとう。でも、法に触れない程度でな』

『もちろん』


 そして、俺はトイレから出た。


「ひどすぎますよ!! こんなかわいい私を教室で一人きりにさせるなんて」


 くそ、なんて魔の悪い。まさか、こいつと鉢合わせるなんて。


「えーと。恒星と楽しい話で来たか?」

「別に私は恒星先輩とする話なんてありません」


 普通に恒星また知らないところで振られてるよ。


「俺はな、そろそろしんどくなってきてる。だからさ、もう、付きまとわないでくれ」

「いえ、付きまといます。昼休み覚悟してくださいね」


 そう言って去って行った。もう、いい加減にしろ。



 そして、普通に授業に遅れた。あいつのせいじゃねえか。


 そして昼休み。またトイレに逃げ込んだ。まさかこんな形で便所飯になるとは思っていなかった。便所飯なんて人生ですることがあるとは考えていなかった。くそ、不吉だ。


「おーい。皆川先輩? トイレから出てきてください」


 くそい、ばれてる。この俺のオアシスが。どうしよう。ここには絶対に来れないと思うが。……とりあえず


『何? 優希」


 優奈に電話をかける。


「皆川先輩ーいるんでしょ? 私と楽しくご飯を端べましょうよ」

『なるほど、大体状況はわかったわ』


 流石俺の彼女。略してさすカノ。理解が早い。


「もう疲れた」

「確かに、ここまで来るとね」


「せんぱーい? 出てきてくださいよ」


 これはもう先生にチクるしかないのか? 言えばわかってくれるか?


「おい! 俺はお前に付きまとわれて完全に頭おかしいほどしんどいんだよ。もうやめてくれ」

「だったら付き合ってください」

「だから俺はお前と付き合えない」

「だったら、私は実力行使です」


「優希、それじゃあ、方法が悪いわ。私に貸してみて」

「え?」

「スピーカーにして?」

「分かった」


 と、優奈の言うとおりにスピーカーにした。


「ちょっといいかしら、私の知る限り、勇気はそんなので浮気するような男じゃないわ。だから諦めなさい」

「諦められません」

「だったら、いい方法を教えてあげる。優希、ちょっと、彼女にスマホ渡させて」

「ああ」


 トイレから出て、ストーカー女にスマホを手渡す。



「はいはい」


 じっくりと話を聴いているようだ。これは俺に思い付かない説得でもしてるのか?


「分かりました」


 そして俺にスマホが手渡さ多。そして彼女は去って行った。


「おい、何をしたんだ?」

「別に何も」

「嘘つけ」

「まあ、でもこれでしばらくは大丈夫だと思うわ」


 すると、彼女は変わった。彼女は相変わらず、俺に付きまとってくるが、前までの変な感じではない。だが、それでも、


「私と付き合ってください!!」


 などと言ってくるのは何ら変わらない。本当困った。



 そのことを優奈に伝えると、「んー、良くないけど、あの子につけ入れられないくらい私は優希君を愛すから」



 というまさに優奈らしい答えが返ってきた。

 俺はその精神で放課後は優奈と毎日遊ぶ。カラオケやボーリング、ショッピング、山歩きなど。

 だが、それでもあの子の求愛は止まらない。


「先輩付き合ってください!!」

「だから、何回言われても無理だって」

「じゃあ学校だけでも」

「無理だ」


 よくこんなにも何回も来るもんだ。俺だったら最初の二回でもう諦めてる。


「でも、先輩私がきても最近は嫌な顔しないじゃないですか」

「まあそれは、最近ウザ絡みをやめてくれたというのもあるけど」

「私も学びましたから、ウザ絡みばかりしていては先輩に嫌われてしまうと!」

「嫌われるっつーか、俺にも彼女がいるからな」

「なんでですか」

「応えなきゃだめ?」


 もう疲れた。


「あー、優希君」


 優奈が来た。そう、今は放課後である。


「浮気?」

「違う。困ってたところだ」

「ふーん。そろそろ、なんとしよっか? 前までのだと効き目が薄かったみたいだし」

「何をする気だ?」


 そして、優奈は静かに、「一緒に帰ろうか」と言ってストーカー女と一緒に帰っていく。

 明日死んでなかったらいいんだが。


 とりあえず家に帰り、荷物を置く。隣の家だから、何かあれば駆け付けられる。

 とりあえず、ゆっくりしよう。


 すると、一時間後、電話がかかって来た。


『助けてください』

『ふふふ、だめよ』


 そして電話が切られた。


 マジで何をしてるんだ、あいつ。

 そしてすぐさま優奈の家に行くと、


「もう、近づかない。そう10回言って」


 そう言って、脅してる感じだった。

 ああ、なるほど。力技か。


「もう近付きません、もう近付きません」

「声が小さい」

「もう近付きません!!」

「それをもう九回言って?」

「もう近付きません!! もう近付きません!!!!」


 あ、地獄だった。

 優奈を怒らせてしまったのだろう。

 もうこうなったら、どうしようもできない。

 それに、優奈が法を犯さない限り、俺には町田さんを助ける義理は無いのだから。


 そしてその地獄の拷問は、しばらく続き、町田さんは、正気を失った顔で、外へと出て行った。


 そしてそんな彼女を見送った後、


「あ、優希君遊ぼう!!}


 そう言ってくる優奈のことがほんの少しだけ怖くなった。

 遊んだら、すぐに治ったが。


 その翌日から、町田さんは学校に来なくなったようで、転校して行ったそうだ。

 なんというか、やはり優奈は敵に回したら行けないなと思った。

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