4、髪の色
4話です。よろしくお願いします。
蝋燭を灯し、机の引き出しを開ける。簪を見つめ手に取る。
あれから3日経ったけどあの時、私を安心させるために紅葉さんは自分の事を話したんだ。実の親に奈落へ捨てられた事なんて、話したくもないはずなのに…
「気を使わせてしまった…」
それにあれから毎日紅葉さんと食事してるけど、いつも通りだ。変わったって言ったら少し話しやすくなった気がする…
色葉は考え事をしていると、扉をノックする音がした。はい!と返事をすると扉が開く。ノックした人物は紅葉だった。
「明日、地獄の王に会いに行く。色葉が目覚めた事。話したいことがあると言っていた」
色葉はいきなりの事で固まっていた。
「私も行くから心配するな」
その言葉を聞いて色葉の固まりは解ける。
「本当ですか?」
「ああ、2人きりにする方が危ないな」
えっそんなに怖い方なの?
「明日は昼前に迎えがくる。休める時に休んでくれ」
紅葉はそう言い残し出て行った。ため息混じりに色葉は立ち上がりベッドに倒れ込む。
地獄の王…どんな感じなんだろ……想像がつかないや
色葉は布団に入り眠りについた。
「おはよう。早いな…眠れたか?」
色葉は玄関前にある椅子に座っていると背後から紅葉が挨拶をした。慌てて立ち上がり緊張からか紅葉に深々と頭を下げる。
「おはようございます。とても…眠れました」
緊張してまったく寝れませんでした!なんて言えないよ…何とか隈はお化粧で隠してるけど…
顔を上げて紅葉を見る。
あれ?
「なんだ」
「いえ、なんでもないです」
色葉はなぜか違和感を感じたが、迎えの車が来た事をナ鬼が知らせてくれた。
「いってらっしゃい」
ナ鬼と別れてから、ガタッガタッと車の揺れと共に2時間くらい暗い森を走っていた。窓の外を見てもさっきから同じ景色ばかりで、うっかり眠りそうになりながらも、ふと紅葉を見る。紅葉は外を見ていたが、窓越しに映る紅葉の目と合ってしまう。
「疲れたか?」
いつもなら目を逸らすがそれでも色葉は紅葉を見ていた。
「……どうした」
「あっすみません。ちょっと気になっただけで…」
色葉の視線で紅葉は気がつく。
「髪の色か」
色葉はうんうんと首を上下に振る。
「季節が変わると、もみじは色を変える。私の髪の毛はそれに繋がり色が変わるんだ」
「すごいです!何色にかわるんですか?」
色葉は目を輝かせ興味津々に紅葉を見る。
「暖かい季節は緑、段々黄色になり秋になると赤になる。葉が散り無くなると最終的には黒になり今は毛先の方は茶色で根元の方は緑だな」
「そういえば、最近は暖かい日が続きましたね」
紅葉は髪に少し触れた後、色葉の髪を見た。
「私は色葉の髪色は美しくて好きだ」
色葉は紫色の自分の髪を褒められて少し頬を染める。窓の外がだんだん明るくなり、鏡の様になっていた窓は外の景色を映す。
森を抜けると、そこには大きな湖が現れた。初めて見る湖に見とれていると、いつの間にか車が止まっていた。
「色葉」
紅葉は既に外に出ており色葉側のドアを開ける。
湖に目を奪われていたが、湖の反対を見ると洋風な立派な城が建っていた。圧倒され、ここは本当に地獄なのか?と思うほど真っ白で美しい城だ。
城門前に立つと扉が勝手に開き大勢の揃った声が響く。鬼の使用人たちだ。
「お帰りなさいませ!紅葉様!ようこそ!色葉様!」
紅葉は出迎えの間をスタスタと歩く。色葉は鬼たちに会釈しながらついて行くが、1人の年配の鬼が紅葉に近づき一礼をする。
「あいつは?」
「主人様は、最上階の応接室にいらっしゃるかと」
「ありがとう」
再び歩くと、目の前にはかなり長い螺旋階段が現れた。
「えっこれを登るのですか?」
上が見えない…よ?
「疲れたら言ってくれ」
紅葉は出来るだけ色葉のペースに合わせ、休み休み30分かけて最上階にある部屋の前に着くと、紅葉は色葉の方を向く。
「色葉はあまり答えなくて良い。私が話す」
そう言うと紅葉は扉に手をかけ開ける。
そこには外を眺める髪の長い人が立っていた。
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