32話、匂い
32話です。よろしくお願いします。
色葉はソファに座り緊張の糸が途切れたようにぐったりとしていたが身震いをしている。
「お疲れ」
「………」
「色葉?」
「ご…めん…気を張って…いたから…か震えが…止まらなく…て…」
ガタガタと震える色葉を紅葉は強く抱き寄せる。気を張っていたのもあるが震えの原因は違うと紅葉はわかっていた。
「アオ…すまない色葉と2人にさせてくれ」
無言で部屋を出るアオを見届けて紅葉は色葉に向き合う。
「色葉、私を見ろ」
虚ろな色葉の目は少しだけ動くがそれが限界だった。意識が途切れるその隙間を見逃さず紅葉の目は金色に光り、色葉の目から心に潜り込む。
色葉の心に入るとそこには黒いモヤのような物が張り巡らされていた。
何だこれは…
無音で響かないこの空間は本当に色葉のものなのかと疑いたくなるが紅葉は手がかりを探す為に心の中で耳を研ぎ澄ませる。
微かに鈴の音が聞こえるが…何処から鳴っているかわからない…このモヤが消えれば…
部屋を出たアオは先程の大広間の端っこでポツンと立っていた。
「あら?鞠夜さんではないですか?」
女性はクンクンとアオの匂いを嗅ぐ。
「………」
無言のアオに対して隣にいた女性が声を荒げる。
「スズラン様が話しかけているんだぞ!何とか言ったらどうだ」
「リンドウやめなさい」
リンドウという女性はムッとしつつも口をつむぐ。
「具合が悪いのですか?あちらに一夜さんがいましたので呼んできますね」
スズランとその取り巻きはアオから離れると明羽と一緒にいた一夜に話しかける。
「一夜さんお久しぶりです」
甘い香りと共に美しい声が一夜を振り向かせる。
「花葉家のスズランさん…お久しぶりですこの度は弟がお世話になりました」
「いいえ、あれから咲夜君も良くなって良かったです…それと…あちらにいる方が具合悪くしているみたいです」
スズランが見ている方を一夜も見るがそこには誰も居なかった。
花葉家の者の粘膜や目、涙から花の香りが強く出てしまう為、外では布で目を隠していた。その目を見せるのは霊を送る時と花葉家の屋敷内。屋敷内にはその香りを打ち消す大きな花がある。
一夜の隣にいる明羽は申し上げにくそうに本当のことを話す。
「スズラン様誰も居ませんが…本当に誰かいたのでしょうか?」
「あら居ませんか?あちらに鞠夜さんがいらしたのですが…具合が悪そうでしたので一夜さんにと…」
一夜と明羽は驚きと信じられない気持ちでお互いを見ていた。
「そ…うですか…見間違いとかではないですか?」
「そんな事はあり得ません。以前お会いした時と同じ香りがしました」
絶対の自信があるスズランに一夜と明羽は動揺が隠せないでいた。
鞠夜が生きてる……?
「スズランさんすみません…私は鞠夜を探して来ます」
一夜は明羽をおいて急いで部屋を見渡すが、見当たらない。もしかしたら違う部屋で休んでるのでは無いかと大広間を出ると、早足で歩いていると誰かとぶつかり尻餅をつく。
「すみません…怪我は無いですか?」
「ああ…こちらこそ急いでたので…」
一夜はぶつかった相手の声がした方を向くがそこには誰もいなく尻餅をついて一夜は我にかえる。
「なぜこんな所に私は座っているんだ」
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