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作者: 後ろの物書き

記憶の書き換え屋、そんな人がいたら、あなたは何か消して上書きして欲しい記憶がありますか?

 俺は記憶の書き換え屋だ。

 他人の記憶をほんの一部分なら書き換えることができるから、その能力を売り物にして日銭を稼いで生きている。 

 依頼は多いが、ポリシーを持っているから何でも依頼を受けるわけじゃない。例え莫大な報酬を約束されても、依頼者以外の人生を大きく捻じ曲げてしまう可能性があるような記憶の書き換えはしない。

 事故の目撃者の記憶を書き換えて、議員のバカ息子のしでかしたひき逃げを無実の他のドライバーの仕業にしてしまう、なんてことは絶対にないのだ。

 そんな大きな書き換えをしなくても、小さな記憶の変更で、誰も被害者を出さずに人を幸せにする手伝いはできる。


 今日の依頼は夫を看取ったばかりの老婦人だ。

 グレーの髪を品良くまとめて、古びているが仕立ての良さそうなスーツをまとっている。


「まいど」

「あ、あなたが記憶の?」

「そうです。仕事が終わったらあなたが見た俺の容姿の記憶も書き換えるので、顔は隠しません。さて、ご依頼は?」

「私が覚えている、主人の最後の言葉の記憶を書き換えて欲しいんです」

「どんな言葉に書き換えましょう?」

「あのう、その、最後に私を、妻を愛していると言って亡くなったと言う記憶に」

「分かりました。書き換えても他人の人生に大きな影響がないか確認するために、本当はご主人は最後に何を言い残したか、あなたの記憶を覗いてよろしいですか?」

「はい、かまいません」


 俺は老婦人の記憶の中の夫との別れのシーンを探った。


「あなた、あなたしっかりして!私を置いて行かないで!」

「早苗···本当は早苗と結婚して幸せにしてやりたかった。こんな女と仕方なく結婚して、不幸な人生だった···」


 迷うことなくその部分は「お前を愛していた。幸せな日々をありがとう」と言うセリフの記憶と書き換えた。

 五万円を受け取り、老婦人の見た俺の顔の記憶も消して今日の仕事は終わり。


 この世には無くしたり変えてしまった方が、誰も傷つかず幸せになれる記憶ってものが、たくさんあるものなのさ。

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