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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第65話

また来るさよならは、決してそれだけで悲しいとは限らないから。

彼女が……笑美えみが我に返ったように振り向いたのは。

彼女の……過去れんかの断末魔を思い返した瞬間だった。

思いもよらない声と情景に戸惑いが生じたから。

驚き隠すこともできず……ありもしない現実に、それは実在しているということに、そもそもなにを疑えばいいのか分からない様子。

このセカイは笑美えみの支配下であり、全把握済みであり、逆らう者はいない唯我独尊の許された場所だというのに、この有様は道理に反している。

死んだはずの恋花れんかは、死んでいるという結果のみで笑美えみの中では植え付けられているから。だからあの屋上からは自由に動けるなんてことはない。

もちろん、それは笑美えみ自身にも言えることで。

だからこそ、彼女は依然として、その小さな黒猫の姿……人ではない存在で、今は驚愕している。

私が望んだ……笑美えみに叶えてもらった、人のいないセカイが生まれたから。

…………だったら。それならば?

なぜあの場所で、あのときだけ、私には人の姿が見えたのか。その謎は未だに……いや、今になって明白に鮮明に着々と萌芽を育み始めていた。

私が見た。私が眺めていた。私が傍観していた。

あの母はなぜ? なぜ人である私の母はあの場所でいられたのだろうか。


その答えを開示するかのように。見計らったかのように彼女はまたしても幻聴のように姿形のない言葉を紡いだ。

それは私の脳内に直接届くようにはっきりと聞こえた。

「こんなにも自分のことを曝け出しておいて最後に逃げるなんて、笑美えみにはして欲しくないな……」

「え…………?」

どこから? とは聞かなかった。

その声が恋花れんかだとは分かっていた。だったら、なぜどうしてどうやって話しかけているのかなんて聞くのは野暮だ。

こうして伝わっている時点で十分だった。

「曝け出すって、どういうことかしら?」

それよりも、私は問うた。

「ここはね、きっと笑美えみちゃんの心の中なんだよ」

それが恋花れんかが教えてくれた答えだった。

「心の中だから自由にできる。心の中だから、叶えてあげられる。心の中だから、残っている……そうなんでしょ? 笑美えみちゃん」

「それは一体どういうことなの? 私はどうやってここに来たのよ? 今こうして立って歩いて話しているのは私なのよね?」

「そうだよ。だから、ここはみんなの心が集まる場所なんだよ。笑美えみちゃんが生きてきた中で残ったものが、私たちと通じる場所なの」

「……そうなの? 笑美えみ?」

だからこうして私が見えている景色はこんなにも灰色で。

私が見てきた光景はあなたの中の思い出で。

私が辿ってきた道は、あなたの生きてきた道なのね……。


「うん。そうだよお嬢…………久しぶりだね」

ようやくと言っていいだろう。

笑美えみは……黒猫は私を見据えて、しっかりと声を出した。

どうもおはようございます雨水雄です。

この物語も、雨水が綴ることも今年中には終わるんだろうな……とこんなにも寒くなってきた今、しみじみと実感しております。

毎週短い内容になってしまい、こんなにも長く続いてきたお話でしたが、いよいよって感じです。

最後までお付き合いいだだけると幸いです。

今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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