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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第64話

これから始まる、別れを告げる新たな出会い。

日差しの当たらない建物内から、一歩抜け出したところで、ここはそんなにも外の空気を感じはしなかった。

風も光もない。あるのは、少しだけ高いと分かる雲との距離感の近さ。

あとは緊張感と、よく寝不足のときに脳内から響くような耳鳴りがした。

なににも縛られない、解放感しかないこの場所にある、この緊迫感。

自由とはなにか……重圧もなにもないどこへでも簡単に飛んでいけると教えてくれている遮蔽物の皆無さ。

そんな場所で、一番いて欲しくないそこに。

彼女は…………その小さな黒猫は……。

私にはまだ知らない世界へ引き摺り込む下を見ていた。


「探したわよ、笑美えみ

その名を呼ぶ。もう、届けることは無理なんだと諦めていた呼びかけ。

どれだけ呼んでも、もう会えないからと、そっと仕舞い込んだその名前をぐっとなにかを堪えるように……気付いてほしくて使った。

「……………」

私の声を邪魔するような騒音も雑音も生活音すらもない。

きっと、その尖った小さくて可愛い耳には送られているはず。

でも、彼女はまだこちらを見てはくれなかった。

「これから話すことは、ただの私一人の意見よ」

それでもいい。元々私たちはもうすでに会えないと確約されているようなものだから。

今があるということだけで奇跡なのだから……だというのに、私が告げるのは感謝なんかじゃないのだから。

だから、なにも答えなくてもいい。ただ聞いてほしい。

「私はまだ……あれからずっと、やっぱり笑美えみがいなくなってしまったことが理解できなかった。分かってる。あなたが苦しくて、生きているのがたまらなく退屈で、死ぬことを選ぶしかなかったんだということは……私にはできないけれど、納得することはできたわ」

世の中、そんな人だっている。

生きていることだけが正解だとはいわない。

「ただ、あなたにとっては死ぬということが正解なんだと自分で解決したんでしょうけど……私にはまだ生き続けなきゃ、それが正解だとは分からないのよ」


「ねぇ、笑美えみ。勇気あるあなたはなぜ……私を勝手に置いていったの? その勇気をせめて私に向けてはくれなかったの?」

私にはないものを、彼女はもっていた。だからその選択肢をしっかりと行使できたんでしょう。

でも、だからって……違うじゃない。

「確かに私たちは一緒に生きていたはずなのだから、最期くらい目を見てほしかった……別れを言わせてほしかった。顔を見たら、ぐしゃぐしゃに泣いてしまってたかもしれない。あなたのことを全力で止めていたかもしれない。だったら、そこでその勇気を示してほしかった……!」


「あんなところで、逃げないでよ……卑怯よ、笑美えみ

私が零した涙は……。

手元にあったガラスの花に舞い落ち、そして一瞬にして色付かせた。

誰もが美しいと感嘆するような……それでも言葉を失うほど目を奪うような。

そんな、まるで生きている世界は別物なんだと諭すような虹色を輝かせた。


「そうだよ笑美えみちゃん。私と同じことしちゃダメだよ」

どこからかは分からない。

でも確かに、恋花れんかの声が、聞こえた。

「…………っ!」

ようやく彼女は、体ごとこちらを意識し始めた。

どうもおはようございます雨水雄です。

最近、雨水の周りでは気温の変化やら乾燥やらで、喉をやらては熱を出している人がちらほらいます。

みなさんも、体調気を付けてください!今年の終わりも近いですからね……最後にぱっと元気で過ごせますように。

さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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