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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第61話

今はどうしても会いたくなかった。

こんなにも会いたいから選んだというのに……。

なにが嫌なのかも分からないのが、一番怖いな。

しばらく歩き続けた。

閑散に呑まれ静寂に包まれ、虚空に見下ろされながらひたすらに……。

ただ、一つの音をたよりに、私たちは進み続けた。

「一体、この音はなんなのかしら」

恋花れんかが姿を変えて、一輪の花になった。

そのときから私たちから会話が消えた。正しくは、恋花れんかは何一つ言葉を返せなくなってしまった。

それからというものの、彼女の場所を知っているという恋花れんかがこうなってしまっては、この先どこを目指せばいいのか分からなかった。

それに、相手は自由に動く猫。あの小さな黒猫なのだから……。

ーー「音を忘れないで」

恋花れんかは、最後にそんな言葉を告げた。

そのときから、私には遠くの方から鐘が鳴るような、重く響く音が耳元に届くようになった。

今はそれしかこうして動いている意味がなかった。




何度も道を間違えた。

いくつもの分かれ道があって、答えが分からず選んだ道を進んでみても、音が遠くなっていく感覚があった。逆の道を選ぶと次は音が近づく実感があった。そうして私は間違いと正解を繰り返しながら、また知らない景色の中で彼女を追いかけ続けていた。


誰一人としていないこのセカイを闊歩する心境は、普通に心地よかった。

道を遮るように真ん中を横暴に歩く人もいない。迷惑と危害を顧みず思うがままに煙を上げながら歩く人もいない。

私が思う邪魔者は皆無。

彼女が選んだ人が、彼女との思い出の場所に居座っている。

私がそれを辿る旅は……。

たまらなく満たされる、この心和む時間は……。

どうして正解だと誰も気付かないのか。

こうして純粋が広がっていて、思いやりが纏わりついていて、互いの幸せを願う世界がどれだけ美しいか。

かつて、私と彼女が培った時間で築いたあの空間が、もし世界全体なのだとしたら……例えばこのセカイがもっとそんな人でいっぱいになっていたのだとしたら。

なにも苦労はしなかった。明日を迎える夜になに一つ怯えたりしなかった。どんな未来も笑顔で溢れていた。

「けれど、人はそんな生き物ではないから……」

競争があり、優劣があり、だからこそ下剋上がある。

どんな形であれ、力を示した者こそが自由を謳える。

その自由が、良心とか誠実さとか実意で証明されれば、力とは世界の色をもっと鮮やかにできたはずなんでしょう。

でも、そうじゃないから、彼女の世界は濁って澱んで穢れてしまった。

こんなにも薄暗い灰色に染まってしまった。


人の可能性とは。

本当はもっと世界を綺麗に美しく、温厚にできたはずだけれど。

彼女が現実を見据えた先に生んだセカイは。

排除と除去と消去を繰り返して綺麗にした……。

「とても残酷で悲しいセカイなのよね」


私はそろそろ、見知った場所まで歩き進めていた。

どうもおはようございます雨水雄です。

えーこちらは昨夜から引き続きずっと雨が降ってる感じですね……なんか久しぶりに雨を感じてます。

たぶんここからもっと気温がぐっと下がる気がするので、いよいよ冬の寒さも到来しそうです……空気が乾燥し始めてもいるので、みなさんも体調気をつけて下さいね。

さて、今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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