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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第59話

人は、どこかでは孤独なのかもしれないけど。

一人じゃないときもあるから。

きらきらと眩い粒子を振り撒くような輝かしい黄金色の髪を揺らしながら、恋花れんかは目を閉じた。

「そっか……それで笑美えみちゃんは私と同じことしたんだ……」

風がよくなびく屋上の高さの中、私と恋花れんかは並んで座り、私は今に至る一連をざっと説明した。

笑美えみは学校でいじめられる対象になってしまったこと。その中で私と寄り添う時間を共にしていたが、彼女の中ではずっと迷いがあったこと。

それが、恋花こいはなをいじめていた過去があったということ……だから自分がいじめられるのも当然の報いだし。

なにより、笑美えみ自身……生きるのに向いていないと踵を返しては私と歩んでくれるという道を閉ざしてしまった。

笑美えみちゃんもそんな目に遭ってたんだね……」

そこに浮かぶ表情は嘲笑うものでも、いい気味のものでなかった。ただただ哀憐、喪失、同情……同じ苦しみや痛みで顔が歪んでいるようだった。

恋花れんか笑美えみになにもされていないの……?」

「うん。いつも私に意地悪をしてくるのは別の子たちだった。笑美えみちゃんはその子と一緒にいただけ」

「…………そう」

そうなのね、笑美えみ

あなたは、主犯者の行いに制止する勇気がなく、傍観者であることを共犯者だと認めていたのね。

そんな偽善者。

蚊帳の外にされたくなくて、だから部外者にもなれなくて、同行はするけどそこで静聴することを選んだ。

隣にいた恋花れんかは自由に屋上内を歩き回りながら口火を切る。

「私はいつもちらっとだけ笑美えみちゃんと目が合ってたの。いつもいつも苦しそうで泣きそうな笑美えみちゃんを見てた。あぁ、この子もいじめられてるんだなって」

その声は私の耳元で踊るように跳ねる。

決して楽しく話せる内容ではないのに、なぜこんなにも声は弾んでいるのか。

恋花れんか…………?」

「私はね、笑美えみちゃんのそんな顔が見たくなくて、いつもいつも笑っていようって思ってたの。私は大丈夫だよって伝えたかったの……でも、笑美えみちゃんはどんどん辛くなっちゃうの」

あぁ、聞いていれば簡単に分かる答えだ。

強く生きようとするその姿は、弱い生き物にしてはあまりにも刺さるほど眩しくて、触れられないほど茨が絡みついている。

その勇気は虚飾で、その果敢は虚勢で、その豪胆さはあまりにも虚しくて、人によっては蛮行にすらなり得る。

「それで、なぜ恋花れんかは死ぬことを選んだの?」

そんなにも強いなら、生きることだって続けられる。逃げることも背けることも、遠ざけることもまた寄り道だなんて笑い飛ばして、あなたは輝ける道を選べる。

「だったらいいやってなったの。私を見て笑美えみちゃんがしんどくなっちゃうならいいやって」

「でもそれはそのときだけかもしれないわ。また時間が経てば結び直せる絆だってあると、あなたなら思えるでしょ」

そのまま未来に託す勇気だって、あなたは持ち合わせているはずなのよ。私にはできないことが、あなたにはできる気がするから。

「それを引っ張り続けちゃうのも笑美えみちゃんだと思うんだよね。私の顔を見るたびに思い出してまた辛くなっちゃう気がするの。だから、それならいっそ私がいなくなれば、いつか忘れるときがきたらいいなって……」 

「そのあとも笑美えみがあなたのことを忘れられないってことは考えなかったの? もっと思い詰めてしまうかもとは想像しなかったの?」

これは怒りだろうか……強要かもしれない。

聞けば聞くほど、私の周りは誰だってそうよ。

「結局、笑美えみだってそうだった。あなた達は揃いもそろって自分を無碍にし過ぎなの! もっと自分の価値を認めなさいよ……自分たちが積み重ねてきた時間を大事にしなさいよ……! 残されたほうには、もう、それ以上求めることができないのよ……!」

これは無邪気だ。我儘だ。拒絶だ。

あなたにこれ以上迷惑をかけたくないからと自分の命を無闇に扱う。でもいなくなって解決するのは、いつだっていなくなったほうだけ。あとは放任主義もいいところじゃない!

別に私に力なんてない。この先あなたをずっと守り続けられるなんて無理なのかもしれない。だからあなたたちが救いのない人生に幕を下ろすのは正しいというしかない。

なら……それならば。

笑美えみ恋花れんかもわがままで自分勝手なのよ。こうやって残された私がこれからどれだけ苦しむのかまでは想像できていないのよ」

「でも、私が生きていれば忘れられない! だったら忘れられる手段があったほうがいいの!」


「だったらせめて! いってらっしゃいくらい言わせなさいよ!」

「あ…………」

「死ぬときだって一緒にいてあげるわよ! それくらい理解してあげるわよ! そういう私だってあなたたちも、こっちを信じなさいよ!」


「なんでもかんでも自分のタイミングでいなくならないで!」

どうもおはようございます雨水雄です。

そろそろ物語も終盤を迎えようとしております。

季節の変わり目でもあるので、雨水含めみなさんも体調に気をつけて過ごしていきましょうね。

さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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