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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第58話

この世で、私にとってあなたはただ一人だけ。

そんな言葉をお互いが言い合って理解しているつもりでも。

この世界で本当に理解してもらうのは至難なんだよね。

ーー「あ、来てくれたのね。ここで待ってたよ」

ーー「あなたは…………誰?」

そこにいたのは、今まで見てきた誰よりも綺麗な。

私のように黒くも、笑美えみのように黒と鈍色が混ざり合う特別なものでもなく。

その短く切り揃えられた髪は、透き通るような儚さを帯びた黄金色をしていた。

「…………もしかして、私とあなたは会ったことがあるのかしら?」

過去に、どこかのクラスで一緒になっていたりしたかもしれない。こんなにも華美な髪色をしている子を知らないなんてこともあるかしら……。

「ううん。私とあなたは初めてだよ。今この瞬間が一番最初。でもね、私はちょっとだけ先にあなたのこと知ってたの」

「どうして……?」

笑美えみちゃんがあなたを……るいちゃんを呼んだから。私もここに呼ばれた存在だから、ここではるいちゃんよりはちょっとだけ先輩になるかもね」

どう見ても学生にしか見えないこの子は、もう成人している私にそう宣う。

「あなたも笑美えみに呼ばれた……?」

点と点が繋がる理由はいくつか揃っていた。

笑美えみと関係があって、この場所を選んだということは。

「あなたが笑美えみの言っていた……あなたなのね」

名前を聞いたことはなかった。だから呼べるはずはなく、その他になんと呼称すればいいのかもはっきりしなかった。

「うん、そうなの。恋花れんかよ。私、小早川こばやかわ恋花れんかっていうの。よろしくね、るいちゃん」

「え、ええ……」

この子が彼女の言っていた……彼女がいじめていた子。

本当にそうなの? そう疑って仕方がないほどなにも邪念も悔恨も怨嗟もないような、そんな澄んだ瞳をしている。そのほのかに緩んだ口角はとても演技には見えなかった。

「あ、るいちゃん……目が変わった」

すると今度は私に指摘が入る。

相変わらず能天気に穏やかな表情は私に向けられている。

それに対して私は今なにを向けているのだろうか。

不可解への恐怖なのか。居心地の不快さへの忌まわしさなのか。心が通っていないことへの煩わしさなのか。

初めて会った子が、聞いていた子とは全く違っているという違和感はどうしても拭えなかった。

それは私の傲慢さだとは理解している。私の一人歩きした思考故の迷子ということも。

それでも……やっぱり結びつかないのよ。

なぜいじめていたはずの彼女があんなにも苦しんでいて、正反対にいるこの子はこんなにも楽観的に見えるのか。

私の感覚と同情の余地が正常であるのなら、自ら命を絶つ決断をしたこの子は……かつて齢10代にして幕を閉じた。

もう、人生の緞帳は開くことはない。許されない。そんな選択をまだ拙いともいえる経験論で導いたこの子は。

決して望んで選べたわけがないでしょう。

「なぜ、あなたはそんなにも笑っていられるの……?」

楽しいのなら生きていればいいじゃない。

「あなたは……笑美えみに選ばれていると言ったわよね? それがあなたにとっていいことではないでしょう?」

とてもぬるま湯なんて言える場所ではない。オアシスなんてもっての他でしょう。

るいちゃん。私のことは恋花れんかって呼んでほしいな」

辛辣で、理解できない苛立ちから捻出される棘のある言葉も、この子は気にも留めない。返ってきた言葉は名前で呼んでほしい。そんな馴れ初めに手を差し伸べるやさしさ。

余計に理解に苦しむ……でも、少しずつ信じてもいいかなといえる疑念もあった。

「分かったわ。じゃあ恋花れんか、一つ聞かせたいのだけれど」

「うん、いいよ。私もまだまだるいちゃんとはお話ししたいから」

「ありがとう……恋花れんか、あなたは笑美えみにいじめられていたの? そんな過去が本当にあったりしたのかしら?」

「ううん。私は笑美えみちゃんには、そんなこと思ったことないよ。本当に」

私の迷いと畏怖と渇望を帯びた声は、なんとも拍子抜けるほど。

一番聞きたかった、知りたかった答えによって霧散した。

どうもおはようございます雨水雄です。

最近毎日仕事行っては帰ってきて寝ての繰り返しで、曜日感覚も日にち感覚も乏しくなってしまい、あぁもう9月終わるじゃん……と今これを書きつつ実感しております。

それよりも、昨日9/23は「リコリスリコイル」で主役の錦木千束ちゃんが誕生日でしたね!それだけは忘れてはいけない!以上9月の思い出でした雨水でした。

さて、今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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