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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第48話

私はここにいるよ。

その一言だけで、あなただけが振り向いてくれればそれでいい。

幸い、私の家から実家までの距離は気が遠くなるほどではない。

電車一本で届くその場所に私たちはバラバラで暮らしていた。もう迷惑をかけたくないと逃げ出した私が、無様にも結局どこかで繋ぎ止めておきたかった存在。

私が一人暮らしを始めてから、当然私は一度も母の元へ帰っていない。もちろん、母も私のところへ顔を出すことはなかった。

連絡も取らず……でもいつも心の片隅には憂いの色が染み付いていた。

独りになってからはなにもしていない。なにもしていないから罪も責任も生まれやしないはずだった。

そのはずなのに……それだけで私の蟠りも、心の中のしこりも、解消されることはなかった。ずっとヘドロのように残り続ける償いや報いは私の罪悪感を蝕んで住み着いていた。

なにもしていないから……なにもしてあげられなかった。

私じゃなにをしても、なにを言っても、ここまで人生を捧げて育てた時間に比べれば響くものなんてないのだから……。

それでも、母にとって私はお腹を痛めて産んだ一人の娘だから……せっかくもらった命。いただいた鼓動。また動いている脈動。

私が情けない私であっても、なにものにも変えられない重さを背負っている。才能がなくても、貢献してなくても、価値がなくても、その存在意義は変わらない。

みな平等に与えられたたった一つの孤独という名の命。

ーー人生って孤独だね。

あの屋上前でよく歌っていた彼女は、ふとそんな歌詞を読み上げたときがあった。

私には到底知るはずもない歌だった。調べることもせず、ただ彼女の思いを聴き届けていた。

私が隣にいるのにそんなこと言うんだ?

当時は単純にも嫉妬を抱いて、嘆息を漏らして、彼女の手を潰れるほど強く握りしめたことは覚えている。

だけど、それも今はなんとなく理解できる気がする。彼女はずっと孤独だったんだ……。どれだけ吐きこぼして、泣きじゃくっても、叫び散らかしても、誤魔化せるのはそのときだけ。

結局、私は紛らわせられることしかできていなかった。

しっかり傷ついて、ちゃんと苦しんで……でもそれを私悟られても八つ当たりなんてしないように蓋をして。

私がいて救いになれることはなかった。隣にいるだけでは抱える孤独は拭えない。

それが、今になってようやく理解できた。他者であるこの客観的見解でここにきてやっとこさ。

でも、それでも本当の意味で理解者になることは許されない。私に彼女と同じ傷跡はないのだから……。

「……笑美えみの心はいつもこんな色だったのね」

どれだけ仕事で人と関わっていても、少し息の合う楽しい職場だったとしても。その中で私だけが知っている私の闇を抱える私は……孤独。

人生って相対的には孤独と向き合う時間の方が長いのだと。

消える間際まで孤独であろうとした彼女は、きっと私に痛みを知ってほしくなかったのだろう。

たぶん、あのときお互いの顔を見ていたら……。

そのとき残された私はきっと彼女に切り裂かれて爪痕だけを残されていたから。

「あなたの優しさはどこまでも罪深いわよ」

もし、あなたがこの世界の傍観者であるのならこの愚痴くらい許されてもいいでしょう。


そして私は足を棒にしながらも実家にたどり着いた。

「あなたは……迷子?」

飼ったこともない小さな黒猫ににゃあと可愛らしく出迎えられながら。

どうもおはようございます雨水雄です。

みなさん夏バテしてませんか? 熱中症大丈夫ですか?

ほんとに水分補給はこまめにお願いしますよ!

雨水は今食べても食べてもお腹が空くくらい燃費の悪い健康体なので心配なさらずに!

元気に夏を楽しむぞー!

さて、今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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