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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第42話

逃げてきたわけじゃない。

避けてきたわけじゃない。

ただ、もう会わない方が正解だったから。

彼女の家は、学校を境に私の家とは逆方向にあった。

いつも、同じ電車の中で私たちは背中合わせに進んだところに家があったんだ……。

普段から外出なんて滅多にしない私にとっては見慣れない街。

電車に揺られ、学校を見過ごし、それから数駅したところで降車すると、急に胸が締め付けられる。

知らない風景、見知らぬ人混み、歩き慣れないアスファルトの上……。ただでさえ人見知りを通り越して、今では人を拒絶している私にとっては新境地で、とても新鮮感を味わえるほどの清々しさはなかった。

でも、この街の中に笑美えみは住んでいる……。

いつもあの屋上前で鉢合わせて、笑い合って、心ゆくまで平和を通わせた私の唯一心が許した人が息をしている場所。

笑美えみも、私の家に来たときはこんな感じだったのだろうか……心細くて、孤独で、取り残されるような息苦しさ。

一刻も早く会いたい……会って安心したい。そんな焦る気持ちばかりが足を急かす。

幸い、先生から教えてもらった住所を携帯に打ち込むと、ナビはすぐそこにピンを刺した。

毎日学校と家しか行き来せず、極力なにもしなかった私。

ふと、連れ出されるとすれば、それはいつも彼女からの誘いがあればのときしかなかった。

……そうか。彼女は色んな場所に行ける人なのよ……私と違って。

だから、手を引っ張ってくれた。連れ出してくれた。退屈な私の移動範囲に色をつけてくれた。

そんな笑美えみはやっぱりなにも怖くなかったのかもしれない。私はどうせ動けないから、いつだってそこにいるんだろうと思っていたんだろう。家につけばどうせ出迎えてくれるんだろう……と。

こんな私だから、自分が引きこもって仕舞えば、どうせ追ってはこないだろうと……。

こんなときでさえ、私は彼女との境界線を見つけてしまう。寄り添いあい、縋りつきあい、慰め合った日々のどれもが。

私にとってはどれも初めてでなにも分からなくて、任せきりになってしまうということは……。

全て、彼女の想像の範囲内だったんだということを。

「だったら、今くらいは私が驚かせてやりたいものね」

そうよ。今度こそ、私だって彼女の手を引っ張ってやりたい。多少強引だったとしても構わない。

それくらい力強いほうが、彼女も振り向かざるを得ないでしょうし。

そう、今度こそ……今だけは。

「私が、あなたの時間を奪ってみせるわ」

ついに彼女の家に着く。何一つ迷う道はなく、無事にその家の前に立つ。

彼女が周りの物件と並ぶ一軒家に住んでいることが分かった。

なんにも特別感なんてない、隣同士似たもの同士で並んでいる一つの家。

私が帰る場所となんの変わりもないだろう普通さが極めて目立つ平凡な家。

この箱の中に彼女がいる。

私はもうすぐ届きそうなその箱の中に手を入れたくて。

鈴を鳴らした。


でも結局、彼女は出てはくれなかった。


どうもおはようございます雨水雄です。

もうあたたかく……というより暑くなってきまして、いよいよ蚊の羽音をきくときがこよあとは……。

みなさんも水分補給等しっかりして体調を整えていきましょう!!

さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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