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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第3話

ついこの前まで知らなかったはずなのに。

知ってしまえばこの身は傀儡で、知られてしまえばこの身の見た目は都合のいい道具。

そんな上下関係に優劣関係はどうして同じ人の身で生まれてしまうだろうね……。

「平野さくらと言います。今日からよろしくお願いします!」

彼女と顔を合わせたのはちょうど1ヶ月前ほどのことだった。

まだ夏の真っ最中で、会社までの行き道で滝のような汗を流し、エアコンの効いた部屋で涼んでいたところだった。

またこんな変な時期に新しい子がやってきたのかと呆れた息を漏らす。

こういった営業所では人の入れ替わりなんて日常茶飯事。先月入ってたあの子は今頃どうしているんだろうとかもはや恒例。

だからどうせ今こうしてやってきた子だって新卒じゃなくて中途採用の類なんでしょう……まぁせいぜい自分らしく

頑張ってくれるといいけれど。

続くかも分からない子の名前をいちいち真摯に受け止めてあげることはせず、私はデスクに座りながら汗を落ち着かせる。

また今日も変わらない一日が始まる。無難に無事に終わることができれば明日も同じがやってくる。だからなるべく振り幅の少ない平坦な道を歩いていけばいいの。

私の進む先はは試練の多い茨の道なわけないのだから。ましてや罪悪感やトラウマに苛まれる沼地でもない。

もう、なにもかも枯れきってしまった砂利道なのだから。

だから、もうなににも関心はないのだから、そっとしといてほしい……。


と思っていた矢先。

「あの……佐奈川さながわさん…………?」

先程聞いた初々しい声音が私の近くにやってきた。しかも私の名前を呼んでる……?

普段誰とも会話もしないせいで、名前すら呼ばれるなんて珍しいことなのに……なにかしら?

「ええ、そうだけれど。なに?」

別に怒っているわけでもないけれど、特になにもないのに話しかけられるのも意味が分からないので興味のない無愛想な返事がでてくる。

「あ、えっと……その……」

彼女は完全き萎縮してしまって言葉を失ってしまっている。

「どうしたの? 私になにかあるの?」

すると彼女は今度は首を縦に何度も振る。どうやら私に用があることに間違いはないらしい。理由はさっぱりだけれど。

「……………」

変に声をかけるとまた縮こまってしまうと思い、私は黙って続きを待った。別段急いでいることなんてなにもないし、彼女に時間を使うことにした。

「あの……その、さっき男の人が……今日から色々と佐奈川さながわさんから教わってと……言っていたので」

「…………は?」

不意を突く突然の申し出に理解が追いつかなかった。

それは数秒経った今も現状が把握できず、私が次になにを言えばいいのか、なにをしてあげればいいのかもさっぱり想像がつかない。

こんな私が? 一体なにを教えてあげることができるというのか。

自分のことで精一杯で。自分のことしか考えていなくて。むしろ自分のことですらどうでもいいというのに……。

果たして彼女に興味など皆無だというのに……私はこれからなんのために時間を消費して、彼女の有志ある時間を浪費しなければいけないのか。

「ほ、本当に私なの……?」

「はい。確かに佐奈川さながわさんと言ってこちらを差していたので」

私はその指を刺した張本人に目をやる。ふと目が合うがすぐに逸らされる。

……明らかにめんどうごとを押し付けられたという確信に変わる。

周りを見渡しても、みんな見て見ぬふり。それもそうだ。各自ノルマのために必死なのだから誰かのために費やす時間なんてもったいないんでしょ……。

だから一番なにをしても無害そうな私に押し付けてきたのでしょう。

いつもいつもただ黙って仕事をしているだけの私なんだから……今回ぐらいはという軽い気持ちのいく末がこれなんでしょ。

どうせ新人なんて育ててもちゃんと育つか保証なんてないし、回し者にされた挙句、最終的に空気である私にでも任せておけばいいと思ったのでしょう……。

育成係ですら仕事を放棄しているなんて所詮誰もが人間。経験上、今回も徒労だと決めつけて、だったら私をゴミ箱扱いしてあとは勝手に処理しといてくれっていう利己的で自己中心的。

まぁ、言ってしまえば……こうして今までなにもかもから逃げてきた私へのちょうどいい始末なんだと思えば通りがいいわね。

「あ、あの佐奈川さながわさん……?」

「ごめんなさい。まぁ、そうね……今日からよろしく」

「はい、よろしくお願いします!」


結果から言えば、なぜか懐かれてしまったのでは…?

私は受け身に徹していたはずだった。

彼女が分からない言ったところを指南して、分かっていないと気付いたところを指摘して、あくまで私からこれをこうしろなんて独裁的なことは一切言わない。

そう、あくまでマニュアル通り。それを感情の色もださずにただ淡々とこなしていく。

そのせいで帰る時間が遅くなるなんてことはなかったし、私はそれでわざわざ残業なんかもしなかった。

自分の尺度で、最低限だけを効率よく教えているかも分からない説明を黙々とこなしていく。

それだけだというのに……なぜ彼女が毎日飽きもせず私の元へ駆け寄ってくるのかは、一番私の頭を悩ませていた。

佐奈川さながわ先輩、おはようございます!」

「ええ……おはよう」

私は今、彼女にどんな顔をしていることでしょう……。



どうもおはようございます。雨水雄です。

最近なんだかようやく涼しくなってきたかなぁ……と思えば昼間はお日様さんさんでまだ汗を垂れ流して自転車を漕いでいたりと季節の変わり目を感じます。

夏と秋が拮抗している今ですが、やっぱり調子を崩したりしやすい時期だと思うのでみなさんも気を付けてくださいね。

夏休みが終わっては学校が始まって少し憂鬱になったり、今年新入社員の方はそろそろ仕事に慣れてきて箱の中身の正体に右往左往していたり……色々あると思います。

だからこそ、あなたの好きを見失わないようにしてください。雨水なりにあなたの夢を応援しております。

そんな雨水の最近の好きは……リコリコですね!以上です!

さて、今週もここまで読んでくださりありがとうございます。

では来週もよければここで。

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