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曇天の下の極彩色  作者: 雨水雄
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第33話

明日も全く同じ日であればいいのに。

そう願って眠りについても、その時点でなにかが昨日と変わっていて。

そう望んで同じことをしようとも、誰かは同じようにはしてくれない。

そうでないと生きられないのが人間だとは最初から知っていることがもう、今日だけの日になる。

それから数日が過ぎた。

この何日か……笑美えみのいる毎日は、夕ご飯がどれも豪勢だったのは気のせいではない。

初日は、私が笑美えみになにが食べたいのかと訊ねては返ってきた「お嬢の好きなもの!」の結果グラタンになり、翌日は笑美えみの好きなコロッケになったり……。

確かその次の日はなにもリクエストはしなかったが、食卓には赤飯が並べられていた。

「なんで……?」と混濁した不明瞭を問いただす声がでたが。

「え、なんとなくそんな感じがしたんだよねー」と軽くあしらわれて事なきを得ようとしていた。いえ、全く事なくしてなんてないのだけれど……隣に座っていた笑美えみはお構いなしに美味しい美味しいとぱくぱくそれを口に運んでいた。

まぁ、その様子をついつい横目に見ていると……まぁ、不問にしないでもないかと思い始めている自分もいた。私、実はとても甘いのではないかと自覚するほどではあった。

そんなありふれた日常の中で、そこにしかない小さな息吹に包まれて、私は十分満足していた。

いや、このときばかりは私たちと括ってしまっても過言ではなかったわね。これからの毎日が続くと想定したとき、こんな日々がずっと続けばいいと小さき想像図を描きつつあった。

過ぎ去る記憶がカメラロールの波にかき消されようとも、初めての味が上書きしたあとでそれが最低限になろうとも、それがずっと在り続けられる方法とは。

その時間を毎日繰り返してしまえばいいだけのこと。

毎朝おはようを言う。そのときにあなたが目の前にいる幸福。お互い別々の時間を過ごしたとて、帰ってきたらおかえり。寝るときはおやすみとまた同じように言える。

それが明日にもあればいい。それがまた明日にもあればいい。

夏休みが始まってから、もう癖づいた生活を送るようになり、慣れてしまえばその程度かと思い出のフォルダに仕舞い込まれてしまうのかと思っていたけれど……。

蓋を開けば、それはむしろ永遠であってほしいという渇望を抱くようになり、人生とは案外簡単なものだと勘違いしそうなほどだった。

彼女なら私のこの想いが分かるだろうし、私たちに裏切りなんてものはないのよ。

相手が辛いときは黙ってそばにいるときもあれば、話しかけてあげなきゃいけないときも思いやれるし。喜んでいることはその笑顔だけで私もまた幸せになれる。そのごく当たり前にできそうな気遣いや尊重が私たちにはもうすでに確立されている。

軋轢なんて無縁。摩擦なんて皆無。亀裂なんて無知。

寝食を共にし、もう幸せの萌芽がちらっと顔を見せ始めている暗闇のベッドの中。

「ねぇ、お嬢」

「なにかしら?」

「私さ……別にこのままでいいんだよなぁって思ってるの」

「ええ、分かるわ」

「ほんとにぃ?」

その声色が嬉しそうに弾んでいるのが、この闇夜に色を消されても分かる。

「本当に本当よ。私は明日もこうなると思っているし、その明日も同じだとばかり思っているもの」

「えへへ……じゃあ一緒だ」

ほら、また愉快な声が星々のように転がっている。

「そうね。だから今日はもう寝ましょう」

「うん!」


このときまでは本当になにもなかった。

なにもないことがなによりもよかった。

それなのに……。

暗いが故に漆黒に染まりきる景色の中、チカッと光輝く一つの眩しい色が呼んでいた。笑美えみの携帯がなにかを叫んでいたのが私の目には映った。

笑美えみ、担任の先生から連絡があって……』

母からのメッセージが途中で途切れていてその最後は見届けられなかったが。


どうもおはようございます雨水雄です。

いやぁ……ついに。ついにですよ!

桜をですね、見に行って来ました!もう今年の春もとても満足しております。

雨水が行ったのは河川敷沿いに一本道で咲き誇る桜並木を散歩がてらに眺めることができるようなスポットだったんですけれど、まぁよかったです!ただただよかった。

屋台も並んでいたりと、河川敷ではレジャーシートを敷いたりと、みなさんがそれぞれ桜を背景にその日を彩っている様子を眺めながら雨水も歩いていたんですよ。

あぁ……こういう日で人生を埋め尽くしたいな、と。つくづく思いました。日々、嫌なことって少なからずあったりしますし、それをずるずる引きずってここらが病んでいく時間だって短くない気がします。

それでも、こうして一歩外に出て、感受性を豊かにして、色鮮やかにしてくれる一日が、一日でも増えたらいいなと改めて学ばせてくれた今年の桜でした。

みなさんもどうかたとえ小さな幸であれ、その日がそんな朗らかさで埋め尽くされることを祈っております。

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